芸術とお金の問題

 先日のワタナベアニさんのトークイベントで、とても印象的な話がありました。写真家としてお金を稼ぐことについてです。

 僕は写真家ではないので、直接的には関係のない話のように思えるかもしれません。しかし、そうではないんですよね。むしろ多くの人にとって、間接的に関係する話だと思います。

 つまりどういうことかというと、多くの人にとって今やっている仕事というのが、本当にやりたくてやっているのか?ということです。想像するに、多くの人にとっては生きるために、すなわちお金を稼ぐために、今の仕事をやっているのではないでしょうか。

 トークショーでおっしゃっていたのは、「好きなことをやって、お金を稼ぐというのが、唯一の正解」ということでした。しかし多くの人が、明日生きるためのお金を稼ぐために、人生の時間を使わなくてはならない。だから、最も成功可能性が高いのは、親のスネをかじって、好きなことをやるという方法だともおっしゃっていました。

 この話は個人的に非常に納得感がありました。生きるためにやりたくもない仕事をやっている、というのはきっと多くの人に当てはまる事象なんだと思います。そして僕が最近個人的に感じているのが、この状況って本当は社会的に大きな損失を生んでいるのではないか?ということです。

 つまり、そういった人たちに十分な生活資金があれば、本来やりたかったことに時間を注ぐことができ、もしかしたら何か新しいことを生み出す可能性があるわけです。だけど、生きるためにお金を稼がなければならないから、その可能性はなくなってしまっている。今の社会は潜在的なクリエイティビティを喪失させることになっているような気がします。

 僕としてはベーシックインカムの社会実装に関心があるので、こういった課題を解決できる手段として、有効なんじゃないかなと思っています。だけど、ベーシックインカムを導入した際の人間がどのような挙動を取るのかということについては、慎重な議論が必要だとも感じています。コミュニズムという壮大な社会実験が失敗に終わったことの教訓は、忘れてはいけません。

 クリエイターにはいつの時代もお金の問題が付き纏っていました。多くの人が幸せになれるような案がないものか、いろいろと考えるのも面白いですし、いつかそういう社会になれば良いなぁと思います。

 それではまた! 

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