5150
大学に入った最初の夏休みにアホ程バイトしてギターのアンプを買った。
PEAVEY5150-212コンボ。
先頃亡くなったエディ・ヴァンヘイレンのシグネイチャーモデルのギターアンプだ。
HRHM御用達のハイゲインアンプに狂喜乱舞していた18才の夏、一つ上の高校の先輩と、その先輩の家の物置を改造して作った音楽小屋に籠り、私達はバンドの真似事をして遊んだ。
だが所詮はガキの戯れ、何の結果も残さぬままバンドは無くなり、遊ぶ金欲しさに私はそのアンプを手放した。
時は流れて現在、仕事で広島に来てから何の因果か私はまた5150を手に入れた。
もちろん過去に私が手放した個体ではないが、広島の友人とまたしても物置を改造した小屋に篭って楽しんでいた。
ある程度歳を取ってくると、普段連絡が無い人から連絡が入ると身構える。特に夜。
件の先輩が亡くなった、とやはりその頃一緒に遊んでいた先輩が言う。
事件性有りの、撲殺。
ニュースに出た一瞬の名前を見た別の先輩が連絡を回して調べたらビンゴ。
借金絡みで囲われて、絵に描いたような転落人生。
おいおいどこの昭和の話だ。
平成も終わって令和だぞ今。
死んでしまえば元も子もないじゃないか。
金の相談には乗れんが、何か出来る事があったんじゃないか。
何年も連絡取ってなかったけど、相談くらい乗れたんじゃないか。
アンタ一つ上だったけど、俺の言う事は何故か聞いてたじゃないか。
アンタがどれくらい身を持ち崩したか、人づてに聞いてたよ。
思いっきり怒ってあげれば良かったのか。
いくら思っても、最早何も届かない。
時を戻す術は無いのだ。
アンタが生き返る事はないし、俺たちはあの物置小屋には戻れない。
またしても、私には祈る事しか出来ない。
5150また買ったよって言ったらアンタどんな顔しただろうな。
良い音するぞ、5150。知ってるだろ。
あの頃の、18才の頃と同じ音だよ。
良い歳して何やってんだろうな俺。
しかし今日も良い音だ。
馬鹿程の音量で弾いたら、アンタの所まで届くかい?
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