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兵庫県たつの市で初!ナガセミライ株式会社が特例子会社認定を取得しました

こんにちは。ナガセケムテックスです。

ナガセケムテックスでは、障がいのある方や働き続けたい高齢者に向けて安全・安定・安心な働く機会を提供し、地域社会へのつながりを深めるために、2023年4月3日に「ナガセミライ株式会社」を設立しました。

そしてこのたび、兵庫県たつの市では初となる、特例子会社の認定を取得しました。

特例子会社
障がい者雇用の促進と安定を図るため、親会社が障がい者雇用に特別の配慮をした子会社です。
厚生労働大臣から認定を取得することで、子会社の従業員は親会社の雇用とみなされ、障がい者の実雇用率を算定する際に親会社と同一事業所として取り扱われます。

そこで今回は、ナガセミライ株式会社の代表取締役社長・大西敏聖さんに、会社設立の背景や、将来のビジョンについてお話を伺いました。

大西 敏聖(おおにし としまさ)
1987年ナガセ化成工業入社。長瀬産業への出向を経て2009年にナガセケムテックス機能化学品本部へ。
社長室長、企画・管理本部長、エレクトロニクス本部長、機能樹脂事業部長を経て、2017年に取締役就任。2023年より現職。



ナガセミライ設立の背景

障がい者雇用の現状

一定数以上の従業員を雇用する企業は、従業員に占める身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の割合を法定雇用率以上にする義務があります。

民間企業の法定雇用率は、現状2.3%ですが、今後2026年までに2.7%に引き上げることとなっています。

障がい者法定雇用率の推移

環境分析でみえた課題

特例子会社設立の構想を始めたのは、2021年ごろ。ナガセケムテックスを取り巻く環境を分析し、課題を抽出しました。

  • ナガセケムテックスでは、従来から法律で定める法定雇用率は充足している。ただ、継続的に達成できるかは不透明で、さらなる拡充が必要。

  • ナガセケムテックスでは、これまでも事業活動による社会貢献・地域貢献活動に精力的に取り組んでいるが、障がい者や高齢者の力を借りつつ、より地域社会に根差した活動を推進する必要がある。

特例子会社を選択したワケ

このような課題を解決する方法として、特例子会社設立のほかに、ナガセケムテックス内に新部署設置、障がい者雇用支援サービスの活用などの選択肢がありました。
特例子会社設立は法人登記手続きや会社運営費用、採算性の見通しなど、一見いばらの道のように思われますが、なぜこの方法を選択したのでしょうか。
大西さんは、そのようなデメリットを上回るメリットがあったといいます。

大西:いちばんの決め手は、障がい者雇用や社会貢献事業に関するノウハウを自社に蓄積できるかどうか。支援サービスの活用ではそれが難しい。
また、障がい者に配慮した職場環境や、柔軟な雇用・処遇体系の整備、ナガセケムテックスの定款を超えた社会貢献業務を実現し、地域との共生によるSDGsへの貢献度を高めるためには、特例子会社が最適でした。

意見交換で感じた障がい者雇用に対する連帯感

設立準備の段階では、兵庫県神戸市や姫路市の特例子会社、兵庫県の支援機関を訪問し、精力的に情報収集を行いました。

特例子会社の評価軸は売上や利益ではなく、雇用促進と社会貢献であること、業務に適した人材採用が大切であることなど、多くの気づきを得た一方で、大西さんはある独特な雰囲気を感じたそうです。

大西:我々が「特例子会社を作ります」と伝えると、「本当に作るんですか?」と驚かれると同時に、「本気で作るのであれば、できる協力はなんでもします」と言って、内部資料や、組織体制、業務内容、運営の仕組みなど貴重な情報を提供していただけました。
特例子会社が営利目的ではないということに加えて、一企業で雇用できる障がい者数には限りがあります。そのため、企業連合のように横の連携を図って、障がい者雇用を促進すべきという連帯感があって、非常に勇気づけられました。
いくつかの支援機関へ相談に出向いた際にも、担当者のホスピタリティや障がい者雇用に向き合う並々ならぬ覚悟に強く感銘を受けました。

ナガセミライは、あらゆる「つながり」に温もりを提供する会社

いちばん最初に決まったのは社名

「ナガセミライ」という社名は、特例子会社562社から社名のトレンド解析を行い、前向きで、親しみがあり、覚えやすく、書きやすく、音感が良いものを選びました。

・・・というのは表向きで、実際には、大西さんがウォーキング中に突然「ナガセミライ」という社名が"降りてきた"そうです。

大西:「ウォーキング中に降りてきたんです」だけでは当然説明ができないので、しっかりトレンド解析を行ったんです。それでも、やっぱり最初に”降りてきた”「ナガセミライ」を超えるものがなかったんですね。
なので、最初に決まったのは社名なんですよ。社名にふさわしい、名に恥じないような会社にしたいと思いました。

パーパス経営で自分ごと化

ナガセミライは、現在主流となりつつあるパーパス経営を採用しています。


ナガセミライのパーパス経営。Belief(信念)は設立に携わった3人が一行ずつ思いを込めたそう。

なぜ、ミッション・ビジョン・バリューからなる従来の理念経営ではなく、パーパス経営を選んだのでしょうか。

大西:理念経営の場合、やはり経営者から与えられたものなので、なかなか従業員に浸透しない。一方で、パーパスは、従業員や創業メンバーが内発的・自発的にたどり着いた社会の中での存在意義。セットアップした時点で、従業員に浸透しているんですね。ナガセミライに最適だと考えました。

ナガセミライの「いま」と「未来」

特例子会社としてのスタートを切ったナガセミライは、今後どのような事業展開を予定しているのでしょうか。

まずは、ナガセケムテックスの従業員に知ってもらう

2023年度は、これまでナガセケムテックスの総務課が行ってきた清掃や庶務に関する役務提供の拡充を図りつつ、外注業務の内製化を通じて、ナガセケムテックス従業員にナガセミライのアクティビティを認識してもらうことを目標としています。

軸となる社会貢献事業の創出

2025年度には、ナガセケムテックスへの役務提供だけではなく、エディブルフラワーやブランドイチゴなどを栽培する屋内農園事業などの社会貢献事業の実績化を目指しているといいます。
また、栽培したものを提供するカフェのような憩いの場を提供することも試案しているそうです。

そして、2032年度には、障がい者や高齢者が働きがいを感じられ、地域課題に寄り添うことで住み続けられる街づくりに貢献しているような企業になることを目指したいと話します。

図中の「NCX」は、ナガセケムテックスの略称

ナガセミライの存在意義


2022年3月に発表された厚生労働省の最新のデータによると、障がい者の総数は964.7万人で、人口の約7.6%に相当します。
また、「令和2年国勢調査」の結果によると、1世帯あたりの人数は2.21人なので、世帯で考えると、約6世帯に1人は障がい者がいる計算です。

そして、1960年の「身体障害者雇用促進法」に端を発する日本の障がい者雇用施策の継続や、社会の認知、企業等による障がい者の雇用が進み、2022年度には61.4万人が就労しています。

「民間企業における障害者の雇用状況」
(厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」より引用)


このように、多くの障がい者が身近にいること、就労できている障がい者は
一部に過ぎないという現実を前に、ナガセミライとしてどのようなことができるのでしょうか。

特例子会社は「メガネ」のような存在

メガネは困難や生きづらさを支えている好例です。
メガネが発明されていなければ、私も障がい者でした。
細かい文字も見えず、車の運転もできないので生きづらさがあったと思います。
視力の低い人にメガネを提供するのと同じように、障がいの有無や大小に関わらず平等に働くことができるような環境を整えることが大切です。

これは、大西さんが参加されたセミナー講師が述べられていた内容ですが、特例子会社の果たすべき役割を明快に表現しています。

障がい者の家族に、「安心できる会社」だと思ってもらう

ナガセミライの設立にあたって、障がい者の親御さんと接する機会も増えたといいます。その際、ほとんどの親御さんがある言葉を口にするそうです。

大西:子どもよりも1日でも長く生きていたい」とおっしゃる方が多いんです。ですが、それは現実的にはかなり難しい。では企業としてそういった気持ちにどのように寄り添うべきか。
いい会社があってよかった」、「安心できる会社で働けて良かった」と思ってもらえるような会社になるべく、責任をもって取り組んでいかないといけないと考えています。

主役は企業ではなく障がい者

「あらゆるつながりに温もりを提供する」というナガセミライのパーパス(志)。
先進企業や支援機関との意見交換、障がい者の親御さんとの交流を経て、ある気づきを得たそうです。

大西:さまざまな声を聞いてパーパスをブラッシュアップしていく中で、「あらゆるつながりに温もりを提供する」のは障がい者自身だという思いに至りました。
ナガセミライの役割は、それを実現できる環境を提供することだと自覚しました。

認定書を手に喜ぶ大西社長とメンバーのみなさん

兵庫県たつの市で初の特例子会社となるナガセミライ。障がい者雇用のノウハウを着実に蓄積しながら、「あらゆるつながりに温もりを提供する」会社として、広く認知されることを期待しています。

そしてそのためには、ナガセケムテックスと二人三脚で取り組むことが非常に重要だと改めて感じました。

文 :木下 仁人 (経営企画本部 サステナビリティ推進室)
写真:竹本 知恵 (経営企画本部 サステナビリティ推進室)





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