介護日記2#55母が「ごめんなさい」と言った
悲しい目をしていた。
暖かい日が増えて来た為か、反応が最近良い日がある。
ある日の母は施設内でのレクリエーション、風船バレーの輪に入れて貰っていた時、その日全く動きが無かった手が少しずつ少しずつ動き始め暫くするとボールの動きに反応して手が上がって触れる事が出来たのだそうだ。
数ヶ月ぶりの出来事だったからとスタッフが急いで写真に納めてA4に印刷してくれた。
楽しそうだった。
フッと元気に成る瞬間がある。
そんな時には言葉もハッキリと話せるし、笑ったり、はにかんだ様子を見せる時もある。
ほんの一瞬なのだが。
今日も肩をすくめてフフッと笑っていた。
しかしそのすぐ後の夕食時には覚醒と思考停止状態を繰り返した為、1口1口を飲み込むのにかなりの時間を要した。
それでもなんとか全部食べ終えた。
口腔ケアをする時に一瞬覚醒したようで
母はハッキリと
「ごめんなさい」
と言った。
私はその言葉に慌てた。
これ迄にも
「ありがとう」
「ごめんね」
など言われたことはあった。
それは感謝している…そんなメッセージだったと思っている。
今日は悲しい目で謝っていた。
「謝る事なんにもしてないからね」
としか返せなかった。
そして就寝の為
「パジャマに着替えるからね」
耳元でいつものように言ったのだが再び
「ごめんなさい」
着替えが終わりベッドへ移乗後
「オムツ替えするからもう少し頑張ってね」
と伝えると再び
「ごめんなさい」
とても悲しい目で。
今日だけで3回も。
「なんにも謝る事ないから。
今日も全部ご飯食べたし、
入院もしなかったから、
良かったんだよ。
よく頑張ったよ。
じゃあね。ゆっくりおやすみ」
私がそう言うとゆっくりと目を閉じてあっという間に寝息をたて始めた。
胸が張り裂けそうだった。
もしかすると、母は自分の身体が思うように動かせない現実を感じ、全ての世話を私がしている事を申し訳ないと思ったのではないのだろうか。
それ以外の言葉は残念ながら聞き取る事が出来なかったので本当の事はわからない。
明日はどんな母だろうか。
不安や悲しい気持ちが消えて
穏やかでありますように。
読んで下さってありがとうございます
今日も明日も良いことがありますように(チューリップ)
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