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【第83回】イタリア(2) 国内展開から国外にも広がるヘンプ建材ネットワーク

イタリアはかつて、1940年代には約10万haの栽培面積を誇るロシアに次ぐヘンプ生産国だった。用途は海軍のロープだが、次第に合成繊維に代替され、さらに国際条約による規制が強まり、徐々に栽培面積は減少した。

その後、90年代から復活の取り組みが始まり(『農業経営者』2018年11月号参照)、17年1月に法律242号/2016に基づいてヘンプの栽培が完全に合法化された。23年度の栽培面積は4000haに及ぶ。


石灰の反応サイクル


本連載でも何度か紹介してきた「ヘンプクリート」は、繊維を採った後のオガラ(ヘンプコア)に水と石灰系の接合材を混ぜてつくる。ヘンプコアの比重が軽く多孔質という特長を活かした建材のため、強度が低く非構造材の壁材に用いる。低密度、断熱性、吸音性、耐熱性、調湿性、耐火性、耐害虫性、二酸化炭素の排出を減らす環境性、デザイン性などに優れた建材として注目されている。

ヘンプクリートの先駆者は、フランスの石灰製造の最大手ロイスト社である。ヘンプのオガラに適した石灰系の接合材を選ぶ過程で(1)生石灰と(2)セメント系、(3)NHL(天然水硬性石灰)、(4)消石灰の4種類を試作・研究した。製品化に至ったのは、消石灰をベースにした石灰製品「トラディショナルPF70」で、05年に発表された(『農業経営者』2018年2月号参照)。

イタリアでのヘンプクリートの事例紹介の前に、ベースとなる石灰について用語を整理しておく。

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