HUNTER×HUNTERから学ぶ、いまゴーストレストランに必要なコトは『覚悟』
週刊のニュースまとめも100週目の投稿という節目も迎えたので、ここでひとつ番外編を書いてみました。
外出自粛や外資の大手サービス参入など、いま国内ではフードデリバリーが盛んです。
そんなプラットフォーマーの隆盛にともなって飲食店の加盟も増えていますが、特にゴーストレストラン(デリバリー・テイクアウトを中心としたイートインなし店舗)がいま大きく増えています。
また、吉野家のように自ら運営をしたり、すかいらーくのようにデリバリー専門店をだしたり、トリドールのように出資したりと、大手も着々と進出しています。
とはいえ、こういった新しいビジネスモデルというものは、なかなか仕組みが固まりきっておらず、いくつかの負の側面も見え隠れします。
ということで今回は、ゴーストレストランがいま抱えている課題を深堀りし、クリアに理解した状態で、ユーザ側も含めて今後どのようなスタンスで向きあっていくべきか、を考えてみたいとおもいます。
▽前提
まず端的にゴーストレストランの課題を文字にしてみると、
『〇〇専門店』と謳っておきながら、専門店らしからぬ店舗運営をしている
です。
なので、ゴーストレストランというモデル自体は問題ではありませんし、上記のような運営をしているのはあくまでも一部なのであしからず。
※もちろんこの課題は明確な線引きはできず、人によって受け取り方は違うので、このnoteはあくまでも個人的感覚であることをご了承ください。
▽発端
特にこちらの記事やツイートは知っている方も多いとおもいます。
このニュースは2020年のことですが、2021年現在もたびたびこのような記事は出てきています。
さて、課題について深堀っていきますが、まずは改めてこちらのツイートをごらんください。
おそらく多くの方は、この飲食店に対して、「裏切られた!」とおもうか、そこまではいかなけれどなんだかモヤっとする、とおもいます。
▽そのモヤっと感(≒優良誤認)の正体は何か?
「専門店」と謳いながら「複数のブランドを1店舗で運営している」こと
ではありません。
ここからカギカッコに分けた部分を深堀っていきます。
▽そもそも「専門店」とは?
wikipediaの力を借りると…
ある特定のジャンルの商品を中心に販売する店。
経済産業省では「取り扱い商品が、特定の分野で90パーセント以上を占める店で、主として対面販売(セルフサービスではない)で販売を行なう店」(中略)としている。
経済産業省で定義がされているようです。
とはいえ、後半部分の「主として対面で販売を行う」という部分については、もはや時代に即してませんし、モヤっと感はここではありません。
やはり深堀る部分は「"特定の分野"で90パーセント以上を占める」ですね。
▽"特定の分野"とは何か?
いま我々が想像する飲食の専門店とは…
料理ジャンルのさらに先の料理名に特化した飲食店
です。
ここで出前館のカテゴリを見てみましょう。
出典:出前館
ここに載っているのは(カテゴリの粒度に差がありますが)基本的には料理のジャンルです。
ひとむかし前であれば、カレー専門店、サンドイッチ専門店、タイ料理専門店…など、この料理ジャンルレベルでじゅうぶんに専門店と謳うことができました。
とはいえ、いまはこのように謳っても、もはや専門店とおもってもらえません。(ユーザの心は動きません。)
「料理ジャンルのさらに先の料理名に特化した飲食店」というのは、例えばこのようなもの。
中華:麻婆豆腐専門店
寿司:いなり寿司専門店
洋食:ハヤシライス専門店
和食:さば味噌定食専門店
丼:ローストビーフ丼専門店
タイ料理:カオマンガイ専門店
これでようやく専門店と言われてしっくりくるとおもいます。
まさに"おかか"専門店なんて、その代表例みたいなものですね。
つまり「ユーザである我々も専門店としてのハードルを上げている」ということをまずは再認識する必要があります。
そしてそこを逆手に取って、ゴーストレストランでいくつもの専門店(もどき)をオープンさせ、当たらなかったブランドや摩耗してしまったブランドを次々と改廃させるやり方が流行っているのが今のトレンドです。
どんな道具も使いようで、ポジティブな使い方をしている場合もあれば、その逆も然り。
ここがまさにゴーストレストランの負の側面だとおもいます。
▽「複数のブランドを1店舗で運営している="特定の分野で"90%以上を占めていない」ことの是非
ここで質問です。
ひとつのお店で、サラダボウル専門店とエイジングビーフステーキ専門店を運営。同じキッチン内であっても、それぞれ専用のシェフが調理している、という飲食店。
なんとなく、これならアリかも…。っておもえてきませんか。
さらに、
どちらのブランドも、それぞれ独立して公式HPを開設、シェフの顔写真といっしょにブランドのこだわりをアピール、公式SNSでも積極的にユーザとコミュニケーションをとりながらブランドを構築している。
こうなってくると、もはやひとつの店舗・ひとつのキッチンで調理をしていることなんて、ブランドを運営するための機能の1つでしかないことが分かってきます。
つまり「モヤっと感の正体は、専門店と謳いながら複数のブランドを1店舗で運営していることではない」と書いたのは、専門店の定義というものは、もはや機能的な部分では説明ができなくなっている、ということです。
▽そろそろ結論に…
専門店を謳うこと。
それは「制約と誓約」に等しい。
タイトルには入れておいたものの、HUNTER×HUNTERを読んでいない人には全くわからない結論になってしまいました(笑
読んでいるけど(前提知識があるけど)記憶が薄れている人はこちらをご参照ください。
(呪術廻戦的に言えば「縛り」なのですが、こちらは「制約」しか表現していないので、使いませんでした。)
つまり、
料理ジャンルを極限まで絞り(制約)
それを公にして退路を断つ(誓約)
⇓
実質的+間接的に商品のクオリティを上昇させる
これが専門店を謳うということです。
では、くわしく見ていきましょう。
まず、"実質的に商品のクオリティを上昇させる"という点。
調理人がその料理に特化して情熱を注ぎながらより高みを目指すことによって商品の絶対的価値が上昇していく、ということ。
ある料理に限定して時間を投下すれば、投下時間に比例してクオリティが上がるよねって話。これはわかりやすいですね。
次に"間接的に商品のクオリティを上昇させる"という点について。
これは、「そんな"制約と誓約"を科しているのであれば、さぞ美味しい料理なんだろう!」と、ユーザ側が勝手に想像する付加価値の部分です。
これを定量的にはかる術はなく、また人によっても違うため、あくまでもそうおもわせるだけの情報をどれだけ盛り込めるか、というものになります。
▽モヤっと感(≒優良誤認)の正体
上の画像でクラピカが「制約と誓約は覚悟の証」と、良いこと言っていますね。
この画像を見てユーザがおもうこと。それはまさに、
専門店としての"覚悟"が無いじゃん
≒"制約と誓約"の不履行という感覚
です。
もちろん、実質的な料理のクオリティが高いか低いかはわかりませんが、あくまでも選ぶのは機械でなく人です。
特に間接的な部分が満たされないことが引き金となり、優良誤認となってしまうのです。
ではどうすればいいのか。
これからさらに増えていくであろうゴーストレストランについて、飲食店側とユーザ側の両面で策を探ってみます。
▽飲食店側でやれること
飲食店としての"信用"はどこに貯まっていくとおもいますか?
チェーン店であればまさにブランド名に貯まっていきますが、チェーン店以外では、ブランド名以上に"人"に貯まりやすいです。
あのレストランのシェフだったり、あの小料理屋の女将だったり…。
余談ですが相棒シリーズによく出てきた小料理屋の名前が「花の里」だったなんて、このnote書くのに調べていて初めて知ったくらいです。(シーズン1からかなり見ていたつもりでしたが…)
ドラマの話ですが、まさにブランド名ではなく女将の記憶が鮮明なパターン。
ユーザも暇ではないので、どんな運営をしているのか、どんな素材でどんな調理過程を経ているのかなんて、お腹が空いている時にいちいちチェックしたりしません。
とはいえ、長い人生におけるたかだかこの1回の食事でさえ、失敗したくないと考えるのが心情です。
▽ユーザはどういった視点で"制約と誓約"を見極めるのか
1つは客を迎え入れる店舗を構えているかどうか。
イートイン店舗の初期投資や維持費は相当な額になるので、ユーザにもわかりやすく"覚悟"が見えます。
私の会社の先輩もデリバリーを注文する際は必ずチェックしているそうで、特に"誓約"の度合をはかるにはうってつけですが、これを必須条件とすると、そもそもゴーストレストランというモデルは機能しなくなってしまいます。
そしてもう1つ。
店主・オーナー・シェフ等の責任者が顔を出しているかどうか。
是非、ゴーストレストランで運営する方はここを意識していただきたいです。
公式HPやSNS等、オウンドメディアにおいて、徹底的に顔を出し、商品の良さやそこにかける想い・情熱をアピールしてください。
1店舗で複数のブランドを運営していたって全然OKです。
そこにこだわりがあり、誇りを持って逃げも隠れもせず、どんなに自信のある商品でも問題やご指摘があるならば真摯に受け止め改善につなげていく…。
そんな気概をユーザ側は感じたいだけなのです。
そもそも「何かあったらコイツが責任を取るんだな!?」なんて考えないですし、実際に行動に移す人なんてほとんどいません。
あくまでも『人対人』として接する誠意が見えればそれで満足・安心するものです。
そう考えると、Chompyの仕組みってすごいですね。
ブランドロゴを入れている店もありますが、基本は店長が顔出しで紹介しています。
出典:Chompy
もちろんこのような他社メディアだけでなく、自社メディア(公式サイトやSNSアカウント)を作って顔を出していくことで、本気度の伝わり方が変わってきます。
短期間で儲けるために流行りの商品を展開して売り抜きたいと考えているのか?
本当にこの料理が好きで、その良さを多くの人に知ってもらいたい、そして立ち上げたブランドを末永く続けていきたいと考えているのか?
ユーザは、このスタンスの違いを見極められると(後者のお店を選択できると)クオリティの高い料理に出会えると考えているのです。
こちらは積極的に顧客とのコミュニケーションを図っている6curryのnoteですが、衝撃的なタイトルです。
どの飲食店もこぞってデリバリーを始める中、逆にデリバリーをやめるという決断をしました。
でもそこにはキチンと理由があり、6curryが目指す未来や作っていきたいブランド像にマッチしなくなったからというものです。
まさに手段にとらわれずブランドの目的を全うするための決断です。
結局のところ、どんな運営形態であっても、美味しい料理・素晴らしい体験を提供するための活動なのであれば、包み隠さずに表に出すことがユーザへの信頼につながるということですね。
▽ユーザ側でやれること
通常の飲食店はもとよりチェーン店であっても、「店選び失敗した…」「ここは二度と行かない…」とおもった経験はありませんか。
こちらはバズっているとあるラーメン屋さんを体験したnoteですが、いくらラーメンが美味しいとしても、正直私だったら行きたくないです。
つまり店舗を構えていることはゴーストレストランに比べて"誓約"の度合いは上がりますが、絶対ではありません。
また、昨今フード業界においてもDXの流れや様々なアップデートにより、いわゆるステレオタイプな店舗があって、店主がいて、真っ当な料理を提供する、というものだけではなく、様々な運営形態が生まれていることをまず知っておくことが必要です。
そして新しい運営形態だからこそ、提供できる商品のバラエティも増え、ゆくゆくはそれが未知の新しい体験につながっていきます。
例えば「究極のブロッコリーと鶏胸肉」というゴーストレストランのブランド。
食事というより栄養補給に極振りしたような料理ですが、これシンプルにメッチャ美味しいです。
また、自社で運営するだけでなく、積極的にフランチャイズ募集を行っており、もはや調理工程はレンチンのみというシンプルさ。
かなりターゲットを絞っているのでおそらく通常の飲食店形態では成功できなかったはずで、まさにゴーストレストランだからこそ生まれたブランド体験だとおもっています。
また、逆にゴーストレストランというモデルを活かして、積極的にブランド開発・改善をしている、というのを公表するのもアリですね。
こちらは業界では有名なKitchenBASEを運営している株式会社SENTOENのリリースです。
グラフを見て分かる通り、約1年半の間にブランドが3回転くらい入れ替わっています。
とはいえ、オペレーションや食材の最適化やユーザニーズの把握と研究、収益化できるまでの様子をつまびらかに公開していることで、「これだけ研究しているのだから(料理も信頼できるだろう)」という安心感が生まれてきます。
なので、
①画一的・一方的な基準で判断しない(いろんなお店の在り方があることを知る)
②「ハズレを引きたくない!」ではなく「アタリはどれかな?」といった気持ちで探す
こんな感じでワクワクと好奇心を持ちながらお店を選ぶといいですね。
(でも自分一人の食事ならいくらでも失敗してもいいけど、家族や会社での食事となると失敗できないんですよね…。)
▽おわりに
いかがでしたでしょうか。
結局のところいつの時代も最終的には「人 対 人」の関係性で信頼し合えるかということなので、お店側はもちろん、ユーザ側からも双方の歩み寄りが必要ということですね。
以上。
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