映画「ピンク・クラウド」を見てきたけど!!
2月に見た映画の感想をずっと書こうと思って気が付けば9月…。映画の感想記事って「面白そう!ちょっと映画館に見に行ってみようかな…?」と思ってくれる人を増やすという効果があるかもしれないわけなので、出来ることなら映画公開中に出したいものです…。完全に機を逃している。
一方で、このピンク・クラウドという映画は機を捉えすぎている映画でありました。
名前だけ見ると少しエッチな映画なのかな?と思ったり、ポスターがとってもオシャレだったりして内容が分かりにくいのですが、SF映画となっております。
ある日突然、街にピンク色の雲が現れた。それは触れると10秒で死んでしまう、猛毒の雲だった。誰にも原因が分からぬまま、やがてそれは世界中に現れ、消えることはなかった。人々は唐突に、そのとき偶然居ただけの建物の中に永遠に閉じ込められることになった…。
そう、完全にコロナ渦のロックダウンから着想を得た…と言いたくなってしまう映画なのです。ところがこの映画、企画が2017年で撮影が2019年ということで、映画の内容と世界の様相がリンクしたのは全くの偶然だと言うのです。もちろん、おそらく編集作業とかポスプロあたりはコロナ渦だったでしょうから影響はされていると思いますが、とにかくコロナ渦寓話映画としては世界最速レベルの作品となりました。
2020年、あの忘れがたい外出自粛の春。最初は繁華街に誰も人がいないのが面白くて車から一切降りないドライブを楽しんでみたり、慣れないZOOM飲みをしてみたり、非日常がちょっと楽しかったりもしましたよね。映画でも、最初は人々も恐怖するのですが、やがて新しい世界に順応していく様子が描かれています。
現実の世界、特に日本では実際ロックダウンなど強制的に幽閉されることはなく、平日は普通に出勤する人もいたし、友達に会おうと思えば会えました。しかし映画に出てきた雲はいつまで経っても消えることはなく、いつ消えるかの見通しさえ分からないのです。
これが地味に怖い。めちゃくちゃ怖い。見通しが立たぬことの怖さ。世界が破滅に向かっているわけでも、回復しているわけでもない。ただちに危機があるわけではないけれど、確実に人生を無為にしているという自覚だけはある気持ち悪さ。
最も辛いのが、この "新しい生活様式" に順応できた人と、できなかった人の分断です。なんだかんだ受け入れられた人もいれば、耐えきれず窓から飛び降りてしまう人もいる。映画では新しい生活を受け入れた夫と、かつて自由に外を旅していた頃を忘れられない妻、そしてピンククラウド渦になってから生まれてきた男の子の3人が葛藤します。男の子は生まれた時からこんな世界だから、逆に苦しくないんですね。マスクをつけるのが当たり前の世界で育った子どもたちも同様だったりするのかな。
最終的に耐えられなくなってしまった母親は10秒の自由を求めて…というところで終わるんですが、これ平日の朝に映画館で見たんですよ。夜勤終わりでなんとなく行ってみたら自分以外に誰もいない。普段だと映画館貸切だ!!!になってめちゃくちゃ楽しいんですけど、この映画だけは誰か観客がいて欲しかった。もし今ピンククラウドが現れたら映画館でひとりぼっちになってしまう…。でも、あるいは、誰もいない方が幸せだったのかもしれない……。
それにしても映画.comの評価が2.8なのは流石に低すぎますね。やっぱりピンククラウドを如何に排除してかつての生活を取り戻すか!?とか、ピンククラウドを巡って世界中で兵器転用開発競争…!!みたいな方がウケるのかな。個人的には、あのコロナ渦のどうしようもない閉じ込められた、塞がれた日常生活の感じがおとぎ話みたいに描かれていてとても良かったです。