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映画「Chime」を見てきたけど!
黒沢清監督の映画「Chime」を見てきました!
黒沢清監督って黒澤明の孫か何かだとずっと思ってたんですけど全然違いました。これまで黒沢清監督作品って一つも見たことが無かったんですけど、黒沢清を愛する友人がおすすめしてくれてChimeを見に行くことができました。
予告からも分かる通りこれはホラー映画なんですけど、久しぶりにすごく怖かったです…。まぁそれはホラー映画なんだから当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、そうでもないんですよね。実際、ホラー映画と謳われているものを見ていて本気で怖いな〜〜と思うことがどれほどあるでしょうか?まぁ怖いと言っても所詮はフィクションなのだし、無意識に一歩引いた観客席で見ていることも多くて、本気で恐怖することって実はあんまりないんじゃないでしょうか。
そんな中で、本当に映画を見て怖いなって思うときというのは、個人的には「得体の知れなさ」にあると思います。ホラー映画でよくある興醒めポイントの一つとして、恐怖の正体が現れてしまうということがあります。ずっと姿が見えなかった幽霊・怪異の形姿が明らかになる。そうすると、これまで超越的に思えた怪現象も恐怖演出も「まぁこんなもんだったのか」と、一気に怖くなくなっちゃうんですけど、逆に言えば正体が明らかにされないほど落ち着かなくて怖くなるものです。暗闇のなかに何かが立っているよりも、暗闇のなかに何かが立っているような気がする方が怖いということですね。説明できる現象よりも、何も分からない、理解できない状況というのが人間一番怖いと思います。自身の想像力によって恐怖が増幅されるからですね。
そういう意味でChimeは様々な演出によって得体の知れない感じを出していると思います。例えばChimeはそのタイトルの通りチャイムが聞こえてきちゃうっていう映画なんですけど、その音の正体も分からなければ目的も不明で、最終的に解決もしないという話になっています。このチャイムの音がすごくすごく怖くてね…チリーンっていうベルみたいな音なんですけど、物凄く「ふと聞こえた気がしてもおかしくないサウンド」なんですよね。これがすごく嫌でした!!昔、我が家のすぐ目の前のアパートに病気のお婆さんが住んでいて、夜になるとお婆さんの「あ〜〜」といううめき声が外に響いていたんです。一度友人が家を訪ねてきた時にちょうどそのうめき声が聞こえてきたんですが「このうめき声が家に帰ってからも聞こえてきたら怖いから帰る」と言って帰ってしまった、ということがありました。Chimeの音はまさにそういう音だと思います。本当はそんな音が鳴っていないのに聞こえる気がしちゃうような、いやこれは本当に聞こえているのか?いつからそこで鳴っていたのか、ついさっきから鳴り始めたのか、それとも生まれた時からずっと鳴っていたのか分からなくなっていくような…そういう狂気にまで繋がってしまうんです。こんなにシンプルな恐怖演出なのにここまで影響があるのは本当にすごいですよね。この恐怖を効果的にするために映画の音楽は少なめで、予告編にもあるようなエアダクトの音とか、空調の音みたいな日常において当たり前に存在しているけど普段はそこまで意識しない音が結構強調されています。そうした音のなかにある日チャイムを見つけてしまったら…世界は狂気で出来ていたことが分かってしまったら…もう戻れなくなってしまうんですよね…。怖すぎる。勘弁してほしいです。本当に素晴らしいホラー映画でした!