映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」を見てきたけど
A24の新作映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」を見てきました!この映画を見た人の多くが音がヤバいと話しているようです(バイアスがかかっているかも)。中にはプライベートライアンの再来という声もあるようです(そうか?)。
プライベートライアンの音響的スペクタクルシーンといえばもちろんあの上陸作戦シーンのことを指しますが、あれは銃撃戦オーケストラという感じでしたよね。
いやぁ、今見ても物凄いシーンだなぁと思いますね。銃撃の音にも色々あって、パーン!ドカーン!以外にも銃弾が空気を切り裂くヒューン!という音を何種類も用意して四方八方からサラウンドさせたり、金属に当たる音や跳弾の音などとにかくバリエーション豊かで、時には音響全体のハイをカットして主人公の心理的な錯綜状態を表現したり、あらゆる効果を使って多様な演出を行なっているオーケストラ型の音響作品でした。
一方でシビル・ウォーの銃撃戦はオーケストラ型というよりメタルバンド型というべきか、耳をつん裂くような攻撃的な音が多かったですね。プライベートライアンはシーンとしては残酷で見ていられないんですけど、音だけ聞くと意外と心地が良いんですよね。それは音の尖っている成分を丁寧に取り除いてから重ねているためで、おかげで爆音で聞いてもそこまで耳は痛くならないのです。オシャレなサウンドエフェクトですよね。
対照的に、シビル・ウォーは耳が痛くなる音は敢えてそのまま調整してない感じがしますね。むしろそのまま爆上げしたものを観客にお届けし、より不快な気持ちにさせている気がします。アカデミー音響賞向けではない、むしろB級ホラー映画のジャンプスケアのような脅かし方をしているんですよね。とにかく怖くて仕方がないと話題の赤サングラスとの対決シーンも静寂さと耳を切り裂く発砲音のコントラストでビクビクしているのが恐怖の大半を占めているような気もします。今作は内戦より戦場カメラマンたちが主役ですから、こういう音づけが正しいのかもしれないですね。
という感じで音の話ばかりしてしまいましたが、ストーリーは意外な形になっていたことも印象的。予告やタイトルからすると、アメリカでもし内戦が再び起こったらどうなるのか…壮大な戦闘シーンとともにシュミレートする!!みたいな内容にも思えるんですけど、実際見てみると内戦は起きているようだが映画の終盤までどこか遠くにあって、たまに内戦の現実を目の当たりにする…みたいな俯瞰型のストーリーではなく、よりその世界を生きる人々の視座に立っているストーリーテリングでした。実際、広大な国土のアメリカで内戦が起きたら一般人は全てを把握できないでしょうし、これはこれで良いと思いました。でもこれは前者を期待して見に行った人からするとがっかりポイントになるでしょうから、一部酷評意見もあるようです。
自分としては、なんだかんだで楽しめました!個人的に、Nikon FE2というフィルムカメラが登場したのが良かったですね。主人公が使っているカメラなんですけど、昔の機械式カメラということで、電池がなくても写真を撮ることが出来ます。主人公は戦場で撮影した写真をそのまま戦場で現像し、スマホに取り込んでいました。
これは何気に重要なポイントですよね。もし内戦のような過酷な環境が生まれた時、私たちはどのように記録をするべきでしょうか。実はスマホのカメラでは不十分なんですよね。電池が切れたら決定的瞬間を撮り逃すということもありますが、一番は写真を簡単に改竄できてしまうからです。ひと昔前までは警察の証拠撮影はフィルムで行われていたとも言いますが、それぐらいフィルム写真を改竄することは難しいのです。このAI詐欺画像氾濫時代において証拠性が高いというのはとても価値があるように思えます。フィルムの場合、ネガという証拠が残りますからね。どんなに凄惨な景色も信じてもらえなければ残すことも伝えることも出来ないから、これは良い演出だなぁと思いました。物事を正しく伝えるということがこの映画のテーマですからね。
映画終盤のドンパチは脳みそからっぽで楽しめるご褒美のような楽しさがあり、思慮深いような、ジャンプスケアのような、少し不思議な映画ですね。映画館で見る、というか聴く価値があると思いました!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?