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映画「箱男」を見てきたけど!

安部公房原作の小説「箱男」がついに実写化!?

映画化の企画自体は27年前だったそうですが、ようやく完成に至ることが出来たようですね。
安部公房って「箱男」と短編集「水中都市」ぐらいしか読んだことないんですけど、他の小説では得られない面白さがありますよね。箱男を初めて読んだとき、すごく面白いお伽噺だなって思いました。安部公房は社会派なんて言われることもあるそうですが、これは覗き穴から社会をのぞき見るお伽噺にもなっているわけですね。映画ではこの「のぞき」の要素が最も拡張されています。予告の「完全な孤立、完全な匿名性。一方的にお前たちをのぞく…」というセリフにある通りですね。小説だとこの「のぞき行為」以外の要素も多分にあった気がしますけど、映画にするときはやっぱりこの部分が最も面白い要素でしょうか。終盤には私たちが見ていた映画のフレームが実は映画をのぞく「覗き穴」であることが分かって観客全員を箱男にしてくれるという粋な演出もあったりして面白かったです。

小説を読んでいたときはあんまり考えなかったんですけど、映像化されると思ったよりも箱男ってビジュアルが可愛いですね。箱の下から足だけちょこんと出して小走りで駆けていく姿は郵便ポストが走っているようで案外可愛かったです。箱男は箱男になる男たちのしょうもなさも魅力の一つですから、箱男のビジュアルや動きが滑稽なのは良い映像化だなと感じました。箱男と箱男が激しくぶつかりながら戦うシーンなんて最高ですよね。

この躍動感
戦闘時は側面の穴から腕も出てきたりしてかっこいい。

たまに面白ニュースとして取り上げられる排水溝男(暗いうちに排水溝に寝転がって蓋の隙間からスカートの中を覗く変質者)というリアル箱男のような存在がありますが、人は少なからずそういう衝動を持っているようです。むしろ排水溝に忍び込んで下着を覗こうとするのは分かりやすい方で、世の中には多かれ少なかれ「のぞき行為」が溢れているのかもしれないですね。安部公房は都市のなかに匿名性を見たらしいですけど、今やどこにでも匿名性があって、箱が用意されている状態です。箱の中で私たちも"記録"をとり続けているわけですね。

ところで箱男は渋谷のユーロスペースで見たんですけど、椅子が古いのでお世辞にも座り心地が良いとは言えず2時間狭いスペースに押し込まれるのは本当にキツかったです(席はかなり埋まっていたのです)。となりに座っていたおじさんもお酒とタバコがミックスされた不思議な異臭を放っていて、さながら4DX箱男の様相で臨場感がありました。まぁでも仮におじさんが居なかったとしても、どうも映画製作者としても観客を箱男にしたかった感じもありましたね。体験型映画として観客席で箱男になり、一方的に舞台をのぞく背徳感を再び思い出させてくれました。

意外と映像と音楽がガンガン前のめりで盛り上がっていく楽しい映画だったので、多くの人に気軽にのぞかれて欲しいと思います!

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