原作より救いのある終わりで良かったと思います。映画「返校 言葉が消えた日」感想
見てきました。とても素晴らしい映画でした。
公開日が数日前なのに自分が見たTOHOシネマズ流山おおたかの森では、もう一日二回しかやってなかったのはとても悲しい。というか惜しい。
自分がゲーム版をプレイして衝撃を受けたのは結構最近で、今年の年末年始の時にプレイした。台湾という地域に住む人々とその歴史について、自分は本当に何も知らなかったのだと急に距離を感じた。
事実、日本の学校教育は日本史なんかは人生であまり必要が無さそうな歴史をなが~く取り扱いながら、近代については公民で多少やるし……とほとんどやらないので、自分のような無知の大馬鹿ものが生まれるのかもしれない。
色々意見はあるが日統時代とか周辺国の近代国家に関わる部分だし入れてもいいのではないだろうか。いや、今のカリキュラム変わったかもしらんが。
話を戻そう。
素晴らしいゲームだったので感想も書いておけばよかったのだが、その後よりによってファイアーエムブレム風花雪月をはじめてしまったが為にすべてがその物量と勢いで流されてしまった。惜しいことをした。
素晴らしいゲームな上、価格も安価なのでSwitch持ってる人はとりあえず買って積んでおこう。
ゲームをプレイした身からすると、あれを一本の映画としてどうまとめきるのかな?というのに若干不安があったが、結論から言えば巧みな技法でそれを再構成しきった上、ゲーム版ではなし得なかったその先を見せてくれたので満足度が高い映画となった。
ゲームではほとんどレイシンちゃんを操作するのだが、チャンくんも主人公として据えることで読書会についての話が接続しやすくなっていた。
ゲームではレイシンちゃんの心のうちもセリフより集める手記やその抽象的な描写で描かれていたのだが、映画になりそれがセリフにより、視覚的に整合性のあるストーリーとなるため、ゲーム版よりも、よりグロテスクに彼女の悲しみ・罪・罰が描かれている。
しかしながら、妄想とも夢ともわからない夜の校舎でレイシンちゃんは自身の罪から克己する。夜の校舎周りは結構がっつりホラーしてて、サイレントヒル的な感じでとてもよい。
話を聞き及ぶに監督の方が原作の強火のファンでなおかつサイレントヒルの大ファンということで、別に私は何も関わってはいないが、わざわざ母国語で出てないゲームをプレイして好きと言ってくれてありがたい事だなぁと感謝が尽きない。
レイシンちゃんは現実世界ではもう死んでいるが、その幻をファンくんはしっかり共有している。チャンくん含む読書会の参加者への謝罪も、映画館でのチャン先生への言葉も、全てこうだったらいいのに、という空想である。
しかしながら、最後にチャンくんが学校で待っていたレイシンちゃんの元にチャン先生の手紙を届けて、笑い合うことができた。罪は消えない、死んだ人も戻らない。でも、それらと向き合って忘れずにいよう、という強固なメッセージ性が、映画によってより強まっている。
原作のエンディングより遥かに救いがある再構成で最後の方はもう鼻水すすりながら見てました。
空想上とはいえ、死者であるレイシンちゃんから生者であるチャンくんに託されるという構図は、ちょうど最近話題になった藤本タツキ先生作の長編読み切り漫画「ルックバック」に通ずるものがある。完全に偶然だが、日本での公開がこの漫画が話題になった直後なのはなにか運命的なものを感じてしまう。
スタッフロールに流れる主題歌がこれまた静かで物悲しげで素晴らしい余韻を残してくれるのもいい。後半、おそらくファン先生役?の方の歌声が重なり、独白のように呟かれるあの言葉……書いてて涙出てきた。
本当にいい映画なんだけどこれ確かにどういう経緯で人が入るのかがわからんすぎる。悲しい。サブスクやレンタルに入ったらしこたま人に薦めて回りたい。
余談ですが、布袋劇が割とがっつり出てくるシーンで「ああ、布袋劇ってほんとにこんなに台湾に親しみある文化なんだ……というか早く、東離劍遊紀見なきゃ……」となりました。見なければ。
あと、チャン先生の役者さんがまあ~~~かっこよくてですね、思春期のレイシンちゃんが惹かれてしまうのも無理ないですよ。原作ではあまりロマンス的なものを感じなかったんですが、こう、日本でいう星野源的な良さをあの役者さんから感じました。
読みかけの台湾の歴史の本もちゃんと消化しないとだな。素晴らしい映画をありがとうございました!ドラマ版も時間作って見てみます。