お空の上の物語「SORA」#5
ピピとソウルのたまごの小さいピピ
「おかえりなさい。ピピ」
キラリーは虹の架け橋をすべり落ちてきたピピが乗ったソウルのたまごを受け止めてくれました。ソウルのたまごの中には、人間スーツと困犬・叶犬に作ってもらったデータたまごが入っています。
「お帰りピピ。どんな人間スーツにしたの?データたまごを見せて。」
ユーズが早速データたまごを分析し始めました。地球の卒業テストをクリアするためには、ソウルグループ全体で理解することが大切だからです。
実は、キラーの住むお空の森に行ったのは、ソウルの中のたまごの中にいる小さなピピでした。ピピはお空の広場にずっといたままでした。ピピが小さいピピとうまく繋がれるよう、地球を旅する時と同じように、光のスレッドを通して、小さいピピからのメッセージを受け取る練習をしていたのです。小さいピピとちゃんと繋がることができれば、小さいピピが見たり聞いたり触ったりすることは、実際にピピが体験しているように感じることができます。また、ピピが話したいことを小さいピピが代わりに喋ってくれるのです。お空の上の広場のピピは、その間はずっと眠っていて目を覚ましませんでした。
「キラーが言っていたことはこいうことだったのか」と、ピピはやっと理解することができました。
今回の地球の最後のテストの旅は、お空の上のピピが目を覚まして、小さいピピと繋がることが課題なのです。そうしなければ、キラリーやソウルグループのアドバイスを伝えることはできません。ピピはもう少し練習が必要なようです。
「ピピ、まだまだやることがたくさんよ。目を覚ましながら小さいピピと繋がる練習は次回頑張りましょ。」
そういうとキラリーは、ピピを学びの木の森へ連れていきました。
学びの実とお空の上の約束
ここは、地球の旅をする子どもたちが必ず訪れる場所です。今日も地球の旅が決まった子どもたちでにぎわっています。大きな看板には学びの実の説明が書いてあります。その看板にピタが腰かけてピピを待っていました。看板の上からピタが言いました。
「ピットとピッチもお待ちかねよ。4人でちゃんと話し合わないと、地球で出会う時期が遅くなっちゃうわ。」
「さあ、まずは学びの実を選びましょう。それから、4人でよく話し合ってね。」
キラリーがそう言うと、4人は学びの実を思い思いに選び始めました。
「ぼくは、ハートの実を多くしなきゃいけないよな……。」
ピピはほとんどの学びが終わっているので学びの実はほんの少しです。人を手助けするときに必要なハートの実は、ソウルメイトを見つける時に役立ちます。ピピが学びの実を選び終わると、ちょうど向こうからピッチがピピに近づいてきました。
「ピッチ、学びの実は選べた?」
そう言いながらピピがピッチのかごを確認すると、かごの中に大きな勇気のいる実が入っていました。
「ピッチ。ハンディキャップの人間スーツをもしかしたら選んだの?」
ピピはびっくりして聞きました。地球の卒業テストにハンディキャップの体を選ぶとは思わなかったからです。
「うん。僕の地球の旅の目的はね、ソウルメイトの愛と優しさを思い切り味わうことなんだ。他の星で僕は何でもできたし多くの人を愛で助けてきたから。地球では何もできなくても人々に愛を与えることができる、っていうのを経験するんだ。」
「でも、困犬も言ってたでしょ。希望しても中々ハンディキャップの体はもらえないって。それに見事当たったの?」
「それなんだけど、キラーに相談したらね、地球の最後の旅の場合、まだハンディキャップの体を経験していなければ優先的にもらえるのが地球のシステムなんだって。」
「そうなのか」とピピは思いました。確かにピピもピタもかなり前の地球の旅でハンディキャップの体を経験したことがあります。
「それでね、僕……。体が不自由で歩けないハンディキャップの体をリクエストしたの。地球の旅は初めてだから。ピピ、僕がお空の上のことを思い出すまで、ぼくのことを助けてくれないかな?」
ピピの答えはもちろん決まっています。ソウルメイトを手助けすることがピピの地球の目的ですから。ピピは自分の今までの地球の旅で、ハンディキャップの体を経験したことはあっても、お世話をする経験をしたことがないことにも気がつきました。
「もちろんいいに決まっているじゃないか。僕の目的は、ソウルメイトがお空の上を思い出すようにお手伝いをすること。二人でお空の上のことを思い出そう!」
ピピはピッチとお互いを助け合う約束をしました。
後でわかるのですが、この時ピタとピットもお互いを助け合う約束をしたようです。4人は地球で早い時期に必ず巡り合うように学びの実を選んだのでした。
夢の星へ
学びの実を選んだ子どもたちが、キラリーのもとへ集まりました。
「みんな学びの実をちゃんと選べたようね。次は、今まで決めてきた地球の旅の計画や準備をしてきたことをもとに、詳しい計画書を作るため夢の星へ行きましょう。」
キラリーが星の実を手にすると遥か遠くにある夢の星とお空の広場が虹の架け橋でつながりました。キラリーの後ろには、ピピの途中までの地球の旅の計画書があらわれました。
「この計画書の続きを夢の星で作ってもらうのよ。地球の旅で一番の基本は、自分の夢を叶えて楽しむこと。夢の星でどんな夢を叶えるか決めてきてちょうだい。」
夢の星は、キラリーたちがいるお空の上とはかなり離れています。ですので、夢の星へはソウルのたまごの中の小さなピピが虹の架け橋をわたり行くことになります。
「さー。ピピ、目は覚めているかしら?起きて小さいピピと繋がる練習よ。しっかり目を開けてね。ソウルグループのみんなに小さなピピが決めた夢を伝えるのよ。」
夢の星は地球の近くにあるため、地球の旅の計画書を作ってもらったら、小さなピピ達は地球へ生まれる日がくるまで、地球の側にある月で待機しています。地球の旅の計画書を持ってお空の上のソウルグループのもとへは戻ってこられないのです。
「大丈夫!お空の上のシステムと地球のシステムをしっかり学んだからもう寝ないよ。もし寝そうになったら、きっとユーズがほっぺをつねってくれるでしょ?」
ユーズは笑いながら「もちろん!」と、ウインクしながら親指を立ててOKの合図をしました。
さあ、いよいよ地球へ旅をすることが決まった子どもたちが、ソウルのたまごに乗って夢の星へ出発です。ソウルのたまごの中には、キラーが貸してくれた人間スーツとデータたまご、学びの実が入っています。ピピは目をいつもより大きく開いて、小さなピピを乗せた雨宙船ソウルのたまごに向かって大きく手を振り見送りました。
「絶対、愛であふれた光り輝くソウルのたまごになって戻ってくるんだよ。僕がいつも見守っていることを忘れちゃだめだよ。」
ピピは夢の星へ旅立っていった小さいピピに大きな声で言いました。
ピピの夢。ちゃんとソウルグループのみんなに伝わることはできるのでしょうか?
つづく
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