グルーヴとフィールって何?

「来学期までにフィールを鍛えてこい」と、夏休み前最後の授業でいわれた。

僕はフィールっていうのは、演奏する曲ごとに存在する固有の雰囲気のことだと思っている。コンピューターが演奏する音楽が「なんか違う」のは、このフィールという部分が欠落しているからだってよく言われている。

場合によっては僕がいうフィールをグルーヴだと定義づける人もいるし、そこに関しての解釈は人それぞれ。グルーヴは、個人が持つ普遍的なリズムのとらえ方とそのリズムの強固さで、フィールはそのグルーヴの上に成り立つ楽曲ごとの雰囲気、なんて定義づけるミュージシャンもいる。正直そこに関してはよくわからないので、あえてしっかりと定義づけることはしない。

いずれにせよ僕の演奏は譜面上は問題ないし、著しくテンポが速くなったり遅くなったりもしないけど、「なんか違う」らしい。

ということで、僕はその「足りない何か」を身に付けるために、いろいろな実験をしている。今日はその実験の中で気づいたことを一つ。

この曲に合わせて、ゆったりしたスウィングフィールの感覚を掴もうとしているときに、自分が思うジャストの位置よりわざとモタらせてみた。もしこれが太鼓の達人だったら「可」の評価になるかどうかぎりぎりレベルに遅れた位置で演奏した時、めちゃめちゃ気持ちよく体がノッてきた。

「これがグルーヴしてるって感覚か!」

と思わず立ち上がった。

音楽が持つグルーヴやフィールには引力がある、なんて聞いたことがあるけど、その通りだなって思った。一度そのグルーヴにハマると、そこから抜け出そうにも抜け出せなくなる。今までグルーヴしていなかったときというのは、その引力が及ばないほど離れた位置に自分がリズムを置いていたからなんだなって思った。(とはいってもそれはコンマ何秒のずれなんだけども)

で、ここからが重要で、このグルーヴやフィールと呼ばれるリズムの「引力」に引き寄せられる感覚を養うには二つの要素が必要なんじゃないかと思うようになった。

まずはその音楽自体に強い「引力」がないといけない。

物体はその質量が大きければ大きいほど引力が大きいっていうけど、音楽も同じように引力の強いものと弱いものがあると思う。誰しもが踊りたくなるような音楽っていうのは、その引力が強いんだと思う。だからこそ、名盤と呼ばれる昔から愛されてきた音楽をたくさん聴くとわかりやすい。なぜなら、いわゆる名盤(クラシック以外)はリズムの「引力」が強いことが多い(と僕は思っている)から。そういった音楽を聴きながら、グルーヴを体感することに集中すれば、僕が体験した「引力に引き寄せられる感覚」を、より簡単に実感できるはず。

もし自分から200m離れたところに物体があって、その物体がブラックホールだったら即座に引き寄せられるだろうけど、その物体が月だったら引き寄せられ方はだいぶ弱いんじゃないかな?それと同じ。


そして同時に、自分が引き寄せられやすくないといけない。

引力の強さは引き寄せあう物体の質量に比例するわけだから、自分もある程度の質量があったほうが引き寄せられ方はより強くなるはず(科学的に間違っていたらごめんなさい)。太っている人と痩せている人がスカイダイビングをしたら、たぶん太っている人のほうが速く地球に向かって落ちる(地球に引き寄せられる)でしょ?

音楽に置き換えると、自分の中で鳴っているパルス(体内のメトロノーム)がしっかりしていればしているほど、自分のリズムの質量が大きい状態なんだと思う。そうすると、音楽の持つ引力にも反応しやすくなる気がする。だからいろいろな練習や演奏活動を通して、自分のタイム感を鍛えていく必要がある。


この二つの要素を意識して、引力の強い楽曲を聴きながら、自分の感じているタイムの位置を前後に動かしてみる。そうすると音楽と自分のタイム感がガチってハマって、それ以上どうにもタイム感を動かせなくなる瞬間が来るはず。その感覚をいろんなテンポ、いろんなジャンルで体験したら、だいぶグルーヴ感が養われるんじゃないかな?

僕はこれをしばらく続けていて、ある一定の効果を得られているので、ぜひ皆さんにも試していただけたらなー


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