ほんの記録|9月後半の3冊
『墨のゆらめき』 三浦しをん
オーディブルでの音声配信のために書き下ろされた一冊。公開も、先に音声からだったそうな。
そのせいか、不思議なほど音色が頭の中に流れる作品だった。
踏切の音、半紙を筆が滑る音、子どもの話し声。
本を読むとき、聴覚からのイメージや、記憶をこんなに使っているんだな、ということに気づく。
巻末参考文献リストの後半部分がとんでもない世界に突入していることも、三浦しをん氏らしくて、思わずニヤリ。
『ふやすミニマリスト』 藤岡みなみ
はじまりはなにもない部屋。
一日ひとつずつものを増やしていくなら、なにを選ぶのか。
100日間、つまり100個のものしか選び取れないはずなのに、筆者の生活には「不要不急」なものがかなり早い段階で登場してくる。
随筆。画集。ワイングラス。土偶。
部屋は心象風景だということばがある。
我がこころをからっぽに明け渡したとき、容れたいものはなんなんだろう。
『きのう何食べた? 23』 よしながふみ
23巻。ここまで読んできてよかった…とちょっと涙ぐんでしまった。
そしてまだ物語は続くというのが、素敵だなぁと思う。人生ってそうだもの。
この物語の主人公は、ほんとはシロさんでもごはんでもなんでもなく、「人と人との関係性」なのかもしれない。
たとえ家族でも言ってはいけない一線、やってはいけない一線があること。
家族だからこそ、「うまくやっていく」という考え方は持っておいたほうがよいこと。
レシピ以外にも、シロさんから教わった大切なことがたくさんある。