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ほんの記録|10月前半の3冊
『ミライの源氏物語』 山崎ナオコーラ
「本文中の表現は執筆年代・執筆された状況を考慮し、当時のまま掲載しています。」
文庫本の巻頭などでたまにみる、上のような一文。おそらく、まぁそういうこともあるよねと読み進める方がほとんどだと思う。
私もそのひとり。なにぶん過去のことだからと見てみないふりをしてきた。(たまに途中で耐えられず本を閉じることもあるけど…)
『ミライの源氏物語』で山崎ナオコーラさんは、そういう表現との関わり合い方を探り、共有してくれる。
社会通念は変わりゆくもの。けれど、昔はそうだったで終わらせるのも、なにか違うよね、と。
無視でもなく、過剰反応でもない、第三の方法があったんだ。著者から、新しいレンズを賜った気分。
『つながる読書 10代に推したいこの一冊』 小池陽慈
ただ本を紹介するだけじゃなくて、インタビューあり、対談あり、エッセイあり、詩あり、書簡あり…
この一冊がまずワクワクできる、おもしろいつくりになっていた。
当たり前のことだけど、ガイド本がおもしろくなかったら、そこから読書が広がるはずない。
「本を読むのは楽しい」ってことを、身をもって発信している、素敵な本。
若いひと向きの読書本はたくさんあるけれど、どれがいい?って言われたら「これ、おもしろいよ」って勧めたい。
(ふだん読まない10代は、なかなかちくまプリマー新書には辿りつかないよなぁ…)
『ぼけますから、よろしくお願いします。』 信友直子
さいきん「記憶の上書き」について考えることがよくある。
認知症の祖母がいるのだが、元気だったころのおばあちゃんが、できなくなっていくおばあちゃんに上書きされていくのが、自分でもわかるのだ。
お正月も仕事だった母に代わって、お雑煮を炊いてくれたこと。
おやつ(だいたいスルメ)を出してくれたあとは、かならず「"むしやしない"になったかな?」と聞いてくれたこと。
内職の肩パッドをつくるミシンの横に突っ伏して、気持ちよさそうに居眠りしていたこと。
あのころの祖母の顔や声が、どんどん思い出せなくなっている。
そのことを、ただどうしようもない悲しいものだと疎んじていたけれど、この本を読んで、意味のあることなんだと知ることができた。
上書きを恐れずに。
明日は祖母の顔を見に行こう、と思う。