「利他」と「水道哲学」の先にある経済
経営の神様と言われる松下幸之助さんや稲盛和夫さんは「利他の心」というものを大事にし、それは今も多くの人々や経営者に多大な影響を与えています。
「利他」の思いに沿って、ほんとうに正しい価値観や理念に基づいて仕事をすれば、結果的に上手くいく、ということを最も体現された方だと思います。
今の経済の仕組みやルールでは、きちんと仕事をすると、その結果としてお金という目に見える形で返ってきます。お金が返ってくるのは一つの目安として、自分たちのやった仕事が誰かの役に立っている、ということの表れでもあります。そして、誰かのお役に立てると心も豊かになります。
それは、大きなことでなくても、一つ一つの小さな仕事においても同じことが言えるのではないでしょうか。
利他の思いで仕事をすると、自分にも相手にも様々な形で喜びや幸せが生まれます。
私自身もそういったことを日々実感しています。
「自分がやったことは、必ず自分に返ってくる」というのは、法則なのだと、あらためて感じます。
そして、もう一つの大事な理念として「水道哲学」というものがあります。
松下幸之助さんの経営哲学だと言われていますが、水道哲学とは、通りすがりの人がどこかの家の玄関先で蛇口をひねって水を飲んだとしても、それをとがめたり泥棒扱いされるようなことはない。なぜなら、水道の水が安くて豊富にあるからであって、それと同じように、当時高級品だった電化製品を水道の水のごとく誰でも安く買えるものにしたい、という考えです。
松下幸之助さんは「産業人の使命は、水道の水のごとく、物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供することにある」と語られています。
「無代に等しい」ということは、「タダにする」ということです。
つまり、利益を出すことを目的にするのではなく、むしろ「必要なときには電化製品を誰でもタダで手に入る状態にまでしたい」ということ。
そして、「すべてのものがそうであるような世界にしたい」と、考えておられたのではないかと思います。
それが、水道哲学の究極の姿ではないでしょうか。
「利他の思い」をとことん突き詰めていくと、最後は「すべてがタダの世界」にあり、「利他の経済には、お金は必要のないものなんだ」というところに行きつくのだと思います。