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独白 ー冷蔵庫の中の記憶ー

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冷蔵庫の中で放置されたままのの記憶・思い出を取り出してみた…
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2023年9月の記事一覧

月にエクスタシー

月あかり、孤独が喜びそうな月の温かみ 一輪の花が、だまされて咲きだすような気がする まだ岩手に居た子どもの頃 なぜあんな時間 あんなところを通ったのか覚えていないが 雪で覆いつくされた林の道を 雪道に残された足跡で遊びながら帰っていた… 近道をしようと田んぼの方へ林を抜けた 目の前は突然冷たく静かに それでも皓皓と輝くまんまるな月の光に 周りの全てが蒼白く浮かび上がり まるで音のしない世界に わけもわからない恐怖と淋しさが襲った… でもそれ以上にその風景は美しく とてつもな

月の光の咲きこぼれる木の葉

ゆらゆらと生きてきた 私がこれまで生きてきた時間や場所や状況を思い起こすと ここが私の定位置だ これが私の生き方だ という断固たるものが欠けている気がする だから私は水に映った影のようにゆらゆらと生きてきた などとイメージに合わないことを思う このごろ少し困ったことは私の出身地がわからない 私が話している言葉が何処の言葉かわからない ということだ… 生まれは岩手のさほど大きくない市 そこでは高校1年までを過ごした その後東京に移り、パリに渡り、また東京に… そして30歳を

冷蔵庫に放り込まれたままの記憶…冷凍庫で凍りついたままの思い出…

今まで思い出しもしなかったことが次々に浮かんでくる…夢に出てくるのはどうしてだろう…最近のわたしは記憶の洪水に押し流されそうで不思議だ…。 二十歳の頃、私の人生は長くて60までと考えてたのに…今年の春、70を迎え…すでに10年もオーバしている。そして考えてもみなかった老いといものも実感した…。 この70年の間、冷蔵庫に放り込まれたままの記憶…冷凍庫で凍りついたままの思い出…。冷蔵庫が壊れそれらが溶け流れ出たのだろうか…。 もしそうだったら…それらが腐り姿かたちさえも消えて

雨の化石

朝方のケヤキ通り、音も無く雨が降り出した。ワイパーの感知センサーの調子がおかしいのか、雨粒がコロコロとフロントガラスを転げ落ちて行く。 ふ…と「雨の化石」を思い出した。 そう…まだ岩手に住んでいた小学6年の夏休み、親戚がある隣県の仙台に初めて行ったときだ。 
私はその親戚の家が珍しく家中を探検してまわった。 庭には倉があり、鍵はかかっていなかった。その中に忍び込むと、小さな窓から差し込む薄暗い光の中は、怖いながらもまるで夢の世界に迷い込んだようだった。棚や床には様々な物が積

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部屋に入るとえもいわれぬ違和感を感じた。 光の…いや匂いの質が違うのだ…。 義妹が肉を嫌いな理由としてよく口にする「生臭い錆びた鉄」のじっとりと湿った匂いなのだ。 つけっ放しのモニターの中で男根を咥えた女が白々と浮いている。 頭を掴まれ喉深く咥え込まされた生々しい嗚咽が、女のすべてが吸い取られたかのように悲しく聞こえる。 以前私はある理由で様々なバイトを行っており、もう8年ほど前だろうか…ラブホの24時間メーキングに入った。 市中心部の閑静な高級住宅街の外れに異彩を放つラ