
映画「小学校~それは小さな社会~」を観た。※3/2追記アリ
先月、隣市のミニシアターで上映されていることを知り、「これは駐車場代出しても観た方がいい」と直感が訴えたので、行ってきました。
短編はアカデミー賞にノミネート決定
この作品を知らない、という方のために、軽くお伝えしておくと、本作は山崎エマ氏が監督を務めるドキュメンタリーです。日本の公立小学校に約1年間、4,000時間も密着し、授業の様子から掃除・給食の配膳・学校行事の準備など、ありのままの学校教育を取材したもの。
これをもとに2本の作品が作られ、1本は世界で公開された1時間39分の長編作品。そしてもう1本作られた、23分の短編作品は、先日アカデミー賞にノミネートされたことが発表されたばかりです。
長編の方が本作。アメリカやエジプト、教育大国フィンランドでは20の映画館で公開され、4か月のロングラン上映を果たしたそう。
なぜ、この映画を観ておこうと思ったのか。私の個人的な事情を少し~その①「私の小学生時代」~
私は団塊ジュニアと呼ばれる世代の後ろの方です。父は大学中退・母は高卒の専業主婦という、ごくごくありふれた中流家庭に生まれましたが、4月生まれのメリットを存分に生かしたタイプ。「なんでも、よくできる」と幼少期から周囲にも認められていたし、早熟だったので自覚もありました。
地方なので、公立小学校一択の土地柄。中学受験は電車通学がギリ可能なので、学年に1~2名、良家の子女がすることもある、という感じでした(幼馴染とそのいとこがまさに受験組だった。私は実は彼らのおかげで、ちゃっかり恩恵を受けてもいる。また別の機会に)。
1~2年を担任してくださったU先生との出会いと影響は、とても大きいものでした。ベテランの男性教師でしたが、ちょっと型破りな先生だったことは、子ども心に分かっていました。しょっちゅう校外学習に連れ出してくださったし、ナイフを使って竹とんぼを作ったし、教室で豆まきもしました。学級通信をせっせと発行してくださって、それを集めた2冊の文集は今も手元にあります。(U先生のことは、いつか改めてnoteに書いてみたいです)
のびのびと学校生活をスタートした私でしたが、4年生から暗黒期がはじまります。「ひいき」「仲間外れ」「いじめ」というやつです。「学校は行かねばならないもの」という当時の「当時の当たり前」と、母の支え(+叱咤激励)と、それから武道で鍛えた精神力で乗り切りました。学級委員や児童会のバッジは当たり前のように付けていた子どもでした。
その後はバッサリ省略しますが、紆余曲折あり、二人の子どもに恵まれました。
私の個人的な事情を少し~その②「上の子のこと」~
上の子は今は大学生ですが、親として勉強の心配は、ほぼしたことがないタイプ。クラス委員に選ばれる程度には人望はあるけれど、自分から生徒会選挙などに出ることは一切ありませんでした。「やりたくないことは、やらない」とハッキリ自己主張できる子で、私が通った「思春期女子たちのあるある」に悩まされるのではないかと、実は内心気がかりでしたが、表立ったものはありませんでした。
それを支えてくれたのは、小学校時代の先生方と同級生たちでした。素晴らしい先生方だったと、私は今も思っていますが、本作にかなり共通点の多い学校生活を送っていたのではないかと推察します。中学は隣の小学校との合併でしたが、娘たちの小学校出身者が中心となって、学年の雰囲気を安定させていたようです。
ただ娘からは後になって、「お母さんはK先生は素晴らしい先生だったと言うけれど、そうばかりとは言えないと思うよ」と言われました。K先生というのは、中学年と高学年の合わせて3年間、学年担任をしてくださった先生です。娘の担任も1年間してくださいました。もちろん、K先生のご指導方法にも欠点があることは分かっていましたが、娘の口から伝えられると、考えさせられるものがありました。
私の個人的な事情を少し~その③「下の子のこと」~
学年差のある我が家は、上の子の在学と重なることなく、下の子が入学しました。でも、その「小学校生活」は大変短いものでした。
低学年のうちから不登校の状態になったのです。今は中学生ですが、登校はしていません。不登校のベテランです。
本人は、決してコミュニケーションが苦手なわけではありません。とても優しい子で、幼稚園時代からお友達には欠くことのないタイプでした。いつも友達と一緒に楽しく遊んでいました。でも、「学校」は無理だった。
私自身が「日本の学校教育の良さ」を理解していると思っていたからこそ、本人の「学校へは行かない」という選択は、辛いものでした。当初は学校に通うことで得られる「あんな経験」「こんな経験」を我が子に積ませられない…そういうマイナス点ばかりが目につきました。
本人が登校しないと、書類やプリント類を受け取りに学校へ行くのは保護者。何度、小学校の門をくぐったことでしょう。子どもたちの元気な歌声や、校庭を走り回る姿に、涙が出てくることは一度や二度ではありませんでした。辛い日々でした。
でも、本人の特性などに気付き、「この子は集団生活にストレスが過度にかかるタイプなのだ」ということが理解できてからは、少しずつ私の心持も変化してきました。
この映画を観に行こう、と思えた。不登校児(生徒)を育てる親として、また一歩前進したな、と思えました。
この映画を観てほしいと思う人①
それは、現場の先生方です。
特に、毎日の教室での、職員室での日々に、疲れてしまっている方や、閉塞感を感じていらっしゃる方がいたら、そんな方にも観ていただきたいです。
自分たちが、子ども達に日々かけている「ことば」が、どう伝わっているのか。カメラは、それを克明に、客観的に、捉えてくれています。自分の授業を録画して振り返ったことがある方はいると思いますが(やった方がいいです)、廊下での声掛け、個別指導を録画することは普通出来ないと思います。
本作は、ナレーションが一切入りません。個人的には、それが一番良かった点です。観る人に任されています。
もしかしたら、この舞台になった学校の指導法に疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
朝暗いうちから出勤し、教室清掃をして、職員室で朝ごはんをとる若手教員の姿と自分を重ねて、やっぱりブラックだな…と呟くことになるかもしれません。
でも、きっと、何かのヒントが得られると思います。この映画を観て、なにも考えられない方に、子ども達の教育を任せたくないな、と思いました。
この映画を観てほしいと思う人②
保護者です。
数名ですが、家庭内での様子も収められています(よくぞ、協力してくださいました!)。
ランドセルを買ってもらって、嬉しそうにしている様子。「小学校」にドキドキ・ワクワクしている表情。忘れてしまっていないでしょうか。
毎日の通学の様子。授業参観では見られない、「普段の」様子。4,000時間という圧倒的なボリュームだから得られたであろう「あるがままの姿」。きっと、我が子の小学校生活を重ねて、想像することになると思います。
ハッとするような優しい言葉がけや、ふるまいの出来る子たちの姿も捉えられています。テストの点数や通知表の評価には、決して表れないもの。次の個人面談のときには「学校での普段の様子」、特に「我が子のよいところ」をぜひ尋ねてみてほしいと思います。新たな一面を知ることが出来ると思います。もしかしたら、具体的なエピソードが得られないかもしれません。でも、その問いかけが、先生の視点を増やすことになるはずです(期待)。
先生方のことを考えるきっかけにもなると思います。
子どもの前で、担任の先生の批判をしたことはないでしょうか。
子どもにとって、自分の価値観を大きく委ねている父親・母親が、批判したものに反論することは、難しいと思います。影響が大きいです。
当たり前にある(当たり前じゃないんですけどね)学校生活と、それを支えてくださっている先生方に、改めて感謝したくなると思います。
本読みカードや連絡帳、通知表のコメントに、先生方への感謝の言葉、書いていますか。先生だって人間だもの。そして、そういうメッセージに「弱い」の人が多いというのも、教員という職業を選択した人たちおける傾向です(当社調べ)。
学年末です。一年間お世話になった先生に、しっかり感謝したいですよね。その一言が、先生のエネルギー源となり、来年度に繋がり…バタフライエフェクト!(ハイ、「御上先生」の影響です。長く語っている記事がありますので、よろしければ)。
でも、我が子が不登校になったばかりとかだと、辛いかもしれないので、注意してくださいね。自分の心の安寧の方が優先です。一方、行き渋りがある子を持つ場合は、「なぜ、行き渋るのか」のヒントを得られるかもしれないので、むしろオススメ。
この映画を観てほしいと思う人③
学校を支える立場の人たちです。
誰でしょうか。教育委員会の人?文科省の役人さんたち?
いいえ、ちょっと大きく出てしまいますが、この国に暮らす一人一人だと思います。
「この国に期待が持てない若者が多い問題」は、今に始まったことではないですが、「大人」としてその責任の一端を担わないといけないと感じるこの頃です。
「日本の学校教育に問題がある」と言うのは結構たやすいものです。「教員の質の問題」「親のレベル」というのも同様。
批判的な目は必要ですが、「その良さ」を再認識して、自信をもつことを忘れたくないです。本作は、それを届けてくれているとも思います。
自分が暮らす街に(だいたい)あるもの。それが「小学校」だと思います。
「コミュニティスクール」がどういう形に展開していくかも含めて、私たちは関われる存在だと思います。
この映画を観てほしいと思う人④
最後ですが、我が子たちです(夫は③に含めます)。
上の子には、K先生を含めた話をもっと聞きたい。
下の子がこれを直視できるようになるのは、いつか分からないですが、一緒に観て、語ってみたいです。
山崎エマ監督へ
果敢な挑戦をしてくださって、ありがとうございます!
日本の小学校教育を受けた貴女が、世界に飛び出して、その良さを認識された。それを世界に発信してくださった。
どれだけの人が励まされたことでしょう。
そして、多くのことを考えさせられるキッカケとなったことでしょう。
とんでもないご苦労があったと思います。お疲れさまでした。
アカデミー賞受賞の吉報が届きますように!
おわりに+上映館情報リンク
長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
再上映も決まっているところもあります。諦めないで、ぜひチェックしてみてください。
まだリアルの友人・知人で観たこと人に出会えていないので、ここを読もうと思います。
※3/2追記※
ドキュメンタリー版は、なんと公開されて、youtubeでチェックできるそうです。