様々な社会インフラを支援する、ナビタイムジャパンのコア技術
この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2022の11日目の記事です。
こんにちは、早寝早起きです。
ナビタイムジャパンのソリューション事業部で、法人顧客のサポート対応業務を10年ほど担当しています。
ナビタイムジャパンで提供しているサービスといえば、『NAVITIME』や『NAVITIMEドライブサポーター』『カーナビタイム』など、コンシューマ市場向けのナビゲーションアプリが思い浮かびますが、当社の経路探索技術を活用した法人案件の事例もたくさんあります。
今回は、あまり皆様に知られていない(と思われる)シーンで、ナビタイムジャパンのコア技術が法人顧客の業務を支援している事例をご紹介します。
長年サポートを担当している私にとっても、特に記憶に残っている内容を中心にまとめてみました。少しでもご興味を持っていただけたら嬉しいです。
ナビタイムジャパンの法人案件とは
私の所属するソリューション事業では、ナビタイムジャパンのコア技術である経路探索技術を、ライブラリ形式やAPI形式で法人顧客へ提供しています。API形式でのサービスは『NAVITIME API』という名称で提供しており、ルート検索機能や住所検索機能などをクラウド環境で利用することができます。
一方で、膨大な数のルート計算処理を行うには、クラウド環境を利用するよりもオンプレミスでのシステムが適していることがあります。ネットワークの通信速度やアクセス数制限などを気にする必要がないからです。
また、セキュリティ上の観点からオンプレミスでのシステムが要件となる場合は、そのシステム内のローカル環境でルート計算機能を実現しなくてはなりません。このような要件の場合は『NAVITIME API』ではなく『NAVITIME Engine』が適しています。
最近はあまり制約にはなりませんが、10年ほど前はハードウェア機器のメモリやハードディスク容量、CPU性能などの条件が厳しい案件も多かったです。幸いなことに、ナビタイムジャパンのコア技術は、元々少ないメモリやハードディスクのマシンでも高速に動作するよう設計されており、スタンドアロンPCやスマホ以前のモバイル端末でも問題なく組み込むことができました。以降のお話は、そんな時代に活躍した事例の紹介です。
1、自動車ロードサービスでの利用例
まずは皆さんがよくご存じのサービスです。自動車を運転していて出先で車両が故障して立ち往生してしまったり、思わぬ事故に巻き込まれて困ったことのある経験をお持ちの人もいるのではないでしょうか。
そんなとき、自動車ロードサービスのコールセンターに電話すると、スムーズにサービスカーを手配してくれますよね。しかも「あと〇分ほどで到着しますのでご安心ください」と言われ、実際にそのくらいの時間でサービスカーが到着することもよくあります。実はこの部分に当社のコア技術が採用されていました。
コールセンターでは、電話の相手とのやり取りから現場の場所を特定し、周辺地域に配備されているサービスカーのうち、最も早く現場へ到着できる車両はどれかを検索します。
このとき、裏側では当社のコア技術である「多対1ルート検索」が実行され、複数の出発地(サービスカーの台数分の地点数)から一つの目的地(車両故障地点など)へ最も早く到着する車両はどれかを求めます。
この案件は、
・結果が瞬時に求まること
・車両の向きを考慮できること(Uターンして現場に向かわないこと)
・24時間365日の安定した稼働が可能なこと
が求められた非常にシビアな案件でしたが、現場への到着予想時刻の正確性も高く評価していただき、長期間に渡ってご利用いただきました。
2、水道や電気などの検針業務での利用例
2つ目は、私たちが日々の生活を送るうえで欠かすことのできない電気・ガス・水道の利用に関する場面での利用例です。
検針作業員の方が持っている「ハンディターミナル端末」を見かけたことのある方もいるかもしれません。バーコード情報を読み取ったり検針票をプリントアウトしたりするハンディターミナル端末に、訪問先の巡回ルートを表示する目的でご採用いただきました。
スマホが今ほど普及していない時代に、ハンディタイプのモバイル端末で動作する経路探索技術は貴重な存在でした。
この案件は、一日の検針業務で訪問する場所を事務所で担当者ごとに割り当ててから、訪問先の巡回順を決め、その順番通りに訪問先をまわって作業を進める、という業務フローに適した機能を実現するため、当社のコア技術である「巡回ルート検索機能」をご活用いただいた事例です。
複数の地点間を最適な順番で巡回するルートを求める機能は、当社のコア技術の中でも特に特徴的なものです。当時でも最大256地点の経由地登録が可能で、しかも数秒から十数秒で結果が求まる性能が高く評価されました。
この案件で苦労した点は、限られた地域内での利用が前提となったことです。通常、ルート検索処理で使用する道路ネットワークデータは全国を網羅する範囲で整備されていますが、この案件では「使わない地域のデータ = 端末のストレージを圧迫」となってしまいます。そこで、新たに県単位での道路ネットワークデータを開発し、注文に応じて道路ネットワークデータを特注品のように作って出荷する、という運用フローで対応しました。
また、当時のモバイル端末を利用する案件では、お客様の開発環境や開発言語が案件ごとにバラバラだったことも懐かしく思い出されます。まだスマホ端末が主流ではなかったため、Windowsベースのモバイル環境で動作する要件が多く、Windows CE、Windows Mobileで動作する経路探索ライブラリを環境ごとに用意し、Visual Basicや.NETプログラミング言語でサンプルプログラムを作成し対応しました。
3、地域の安心安全を守る業務での利用例
3つ目は、社会を支える分野での活用例です。万が一の事故や災害に備える日本各地の現場で当社のコア技術が活用されています。そのうちの2つの事例をご紹介します。
まずは防災シミュレーションシステムでの事例です。当社の経路探索技術は、車だけでなく「徒歩」「バイク」「自転車」「公共交通機関」での移動に対応し、それぞれのルートを検索できます。
今回ご紹介する防災シミュレーションシステムでは、車・徒歩・自転車の3種類の移動手段ごとに避難所までのルートを求める、という要件がありました。現在ではナビタイムジャパンのコンシューマ市場向けアプリとして、『ALKOO by NAVITIME』や『自転車NAVITIME』などがありますが、本案件は法人案件で車・徒歩・自転車の道路ネットワークデータを同時に利用した初のケースだったと記憶しています。
このシステムでは、災害発生により道路が寸断して通れなくなった状況下での避難所までのルート算出や、車で行けない場合は徒歩や自転車でどう避難すればいいのか、といった様々なシーンを想定してシミュレーションを行うことを目的としていました。東日本大震災の後で導入されたシステムでしたので、より具体的な防災計画の検討に活用していただけたのではないかと考えています。
最後にご紹介するのは、緊急車両に搭載されているカーナビ機能です。独立した据え置き型のカーナビ機器ではなく、緊急車両専用の車載システム内にナビゲーション機能を組み込む形で導入されました。災害現場へ向かうだけではなく、公共機関や病院などの地域内の各拠点までのルートを、音声案内付きでナビゲーションすることができます。
やはり緊急車両に搭載されるカーナビ機能ですので、1分1秒でも早く正確に現場に到着するルートを求めることが要求されます。
ちょっとでも遠回りなルートが出ると品質改善を求められることも多く、サポート担当としては改善に頭を悩ますこともありますが、品質改善へのこだわりは当社の目指すところでもありますので、貴重なご意見として当社の経路探索技術の品質向上へ役立たせていただいています。
最後に
ナビタイムジャパンのコア技術が、様々な分野の業務で活用されてきたことをご紹介いたしました。社会インフラを支えるサービスに多少なりとも携わっていると考えると、サポート担当として身が引き締まる思いがします。
コンシューマ市場向けのサービスとは少々異なる要件を満たす必要のある案件も多いですが、サポート対応を通じて、お客様から「ナビタイムのルートは正確だから安心して使っています」と言われることが何よりもうれしいです。
今後も、お客様からいただいた貴重なご意見や、サポート対応を通じて得られた知見をナビタイムジャパンのルート品質向上に役立てられるように、引き続き誠実なサポート対応を心がけていきたいと考えています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。