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トラック最高速度引き上げ対応について

こんにちは、TMです。
ナビタイムジャパンで経路探索エンジンの開発を担当しています。
今回は、2024年4月の法改正より適用された大型車の最高速度引き上げに伴う経路探索エンジンの対応についてご紹介します。

背景

2024年4月1日から、大型トラックの高速道路での最高速度が80km/hから90km/hに引き上げられました。
この改正は物流の「2024年問題」といわれる、働き方改革関連法の適用に伴う人手不足の深刻化や輸送量の低下に向けた対応の一環とされています。
経路探索エンジンでは、車両速度を考慮して経路探索を行っているため、今回の法改正について対応を行う必要がありました。

経路探索エンジンの対応

対応内容の洗い出し

経路探索エンジンチームでは、2023年から今回の法改正の動向を追っており、温度感が上がった2024年の1月中旬から本格的な対応を開始しました。
対応内容は速度の変更に限定されており、工数は比較的少ない想定でした。しかし、対応するにあたって2024年問題を含む法改正の背景への理解に不安があったため、初めにこれらの点を明らかにする作業から始めました。

不明点や対応内容の洗い出し(抜粋)

経路への影響調査

続いて、この対応による経路への影響を見積もりました。この作業を行わないと検証時に意図した経路変化が起きているかの判断がつかないためです。
経路探索エンジンでは、複数の速度パラメータを考慮して経路探索を行っています。例えば以下のようなものがあります。

  • ユーザーが設定する速度

  • 規制情報による速度

  • 交通情報から取得する速度(渋滞など)

  • その他

今回の変更はあくまで最高速度の変更であり、実際に全ての高速道路を90km/hで所要時間を計算するわけではありません。道路状況によっては上記のいずれかの速度を使用するなど、最高速度よりも遅い速度で計算が行われています。
そのため、全体としては経路の所要時間が短くなる影響に留まると想定していました。

実装・検証

実装は当初の想定通り速度を変更するだけの対応だったため、コードとしての影響範囲は小さくすみました。
検証では、新しい最高速度で意図した所要時間差分になっているかの確認を重点的に行いました。いくつかの経路で所要時間の変化を確認したり、実際の探索条件を用いたリグレッションテストを行っています。

検証前の時点では、影響範囲は所要時間の差分に留まる想定でした。
しかし、実際に検証を行うと一部で経路形状が変化する差分が存在しました。下記で本対応によって経路が変化する一例を紹介します。

経路の全体像

上記の経路は首都高を通過して目的地に向かう経路です。また、目的地付近の交差点には、7時~9時/13時~15時に大型車規制が存在しています。

時間帯別の大型車規制

対応前の経路は上記の交差点を9:10頃に通過しており、ギリギリで規制の時間帯を避けていました。そのため、交差点を左折し目的地に向かうことができていました。

対応前(上限速度が80km/h)の経路
規制の時間に該当しない

対して対応後の経路は、高速道路区間の速度が速くなったことで早めに規制箇所に到達してしまい、逆に規制を避けるような経路に変化していました。
(間接的にですが、経路探索エンジンが時間帯別の規制を正しく考慮できていることも確認できました)

対応後(上限速度が90km/h)の経路
規制を避けるように経路が変化

上記のような個別経路の差分と、全体的な経路の所要時間について想定通りであることを確認し、法改正のタイミングに合わせて2024年4月頭にリリースを行いました。

最後に

この記事では、経路探索エンジンの最高速度引き上げ対応の流れについて紹介しました。ナビタイムジャパンが提供する経路探索エンジンの裏側を感じていただけたら幸いです。
本対応は当社からプレスリリースが出ています。対応前後の全体的な所要時間の変化についても記載しておりますので、ぜひご覧ください。

これからもユーザーの皆さまが安心して移動できる最適な経路を提供できるように邁進してまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。