日本お米ばなし vol.36 栽培編「栽培方法の独自分類をつくった理由とは?」
Natural Farmingは、お米の専門家である「五ツ星お米マイスター」のいるお店です。
お米が大好きな私たちがお届けする【 日本お米ばなし】ぜひご覧ください。
ECショップでお米を購入する方は年々増加傾向にあります。産直でお取り寄せしている方もいらっしゃるでしょう。
インターネットで検索するとき、「有機栽培 米」「自然栽培 米」といった検索キーワードを入力するとたくさんのお米が出てきます。ただ、そこに書かれている内容だけでは案外わからないことが多いのですが、知識の少ない消費者はイメージで購入してしまう危険性があります。
無農薬・無肥料の表示
そもそも、「無農薬」「無肥料」 等の表示は、優良誤認を招くことから、特別栽培農産物に係る表示ガイドラインで表示禁止事項としています。
特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、地域で一般的に使われる節減対象農薬と化学肥料の使用をそれぞれ半分以下にして栽培された農産物を対象とします。
そして、この表示は禁止されているにもかかわらず罰則がないため、積極的に使用している販売者もいることが問題となっています。
「不使用」という言葉よりも「無」という言葉の方が影響力が強いため、実際に「有機栽培 米」「自然栽培 米」で検索すると表示違反事業者が多くみられます。
米業界では、有機JAS認証や自然栽培について詳しく話すことができる米屋はほとんどいません。
そのため、悪気なく行われているケースも多いのが実情です。
わかりにくい分類
先に述べたように、表示ひとつとっても消費者にとってはわかりにくいのが現状です。では、なにがクリアになれば、表示内容と消費者理解が限りなくイコールに近づくのだろうか。
そこで私たちが考えたのは、独自の分類をつくることです。
「無肥料」正しくは「肥料不使用」の場合でも、収穫の際に田んぼに残る稲わらをすき込んだり、山からの流水によって肥料分となる養分が運ばれてくるなど何かしら肥料となるものが含まれます。
そうでなければ、田んぼから養分を収奪するばかりとなり、土壌はどんどん痩せていき、持続的な生産ができなくなってしまいます。
このことからも「無肥料」とは一体どういう意味で表示しているのだろう?という疑問が湧きますが、それは一旦置いておきます。
基準となる3つの独自分類
肥料を不使用でも周辺環境から流水などによって運ばれてくる養分があることや、収穫後の稲そのものを畑に還すことで有機物が分解し、翌年の稲の養分となってくれること、こういった自然な循環を利用していることを「○○栽培」のような言葉で表現してしまうと理解が難しい。
そこで考えたのが、原料として田んぼにどんな有機物を入れて栽培されたのかを見えるようにすることです。
もっと詳しく知りたい方はこちら
必ず現地の採水地まで訪ねる
私たちは、有機栽培や自然栽培のお米を食味検査し、美味しいものだけを厳選しているほか、栽培履歴や使用資材についての確認はもちろんのこと、現地を訪れ、つくり手の思いを伺い、採水地にも案内していただきます。
このようにして集めた情報を商品ページにすべて記載することで、採水地や育苗培土、種子消毒の方法、種子の採取方法などの曖昧になりがちな部分を開示しています。
一般的な米屋に比べ、産地を訪れる回数や食味検査を実施する回数が桁違いだからこそできる紹介方法なのです。
温室効果ガスの排出削減量も見えるお米
米作りは、温室効果ガスを排出する産業のひとつです。しかしながら、有機栽培や自然栽培でつくられたお米は、慣行栽培のお米に比べて温室効果ガスの排出量を削減しています。
当店では、その削減率を星の数で表示(見える化)し、販売実証を行う事業に参加させていただいています。
おわりに
どうしたら優良誤認を招くことなく、消費者がお米を選択することができるのか、つくり手の思いをしっかり届けることができるのか。
栽培方法の独自基準をつくること以外にも、消費者とつくり手の距離を近づけ、一緒にお米の未来を考えていける取り組みを今後も考えていきたいと思っています。
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