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『人間臨終図巻 上』 山田風太郎

先週の日経新聞で上野千鶴子さんがトイレ本の一冊としてご紹介していたことがきっかけで興味が湧いて購入した本。

時代も地域も様々な人々の死去した年齢ごとに章がまとめられ、それぞれの死に際がまさに図巻として記載されている。共通点のない人たちがこの「同じ歳で死んだ」という括りの中にいることで、不思議な感覚が呼び起こされる。

例えば40歳で亡くなった人だと石田三成とポーと幸徳秋水がいる。少なくとも私はこれまでこの3人に対して同じテーマで考えを巡らせたことはなく、完全に点と点と点の存在であった。しかし、「40歳で死去」という共通項が与えらえると、線として存在するようになった。同じ40年という長さの人生をそれぞれどのように生きたのかという思いが馳せられる。

今の私にとって死はラスボスのように見える。まだまだ出会いたくない強敵。しかし、ゲームのように戦って倒すことは絶対に出来ない。もし何かの科学技術や奇跡により殲滅したとしてもそれはそれで困った状況にはなりそうだ。死ぬのは怖いが死ねないことも恐ろしい。

子どもの頃、死を意識することがしばしばあった。しばしば起こっていた喘息の発作のせいかもしれないし、「子どもとはそういうもの」であるからかもしれない。自分の人生に絶対的に含まれているのに、得体が知れず怖い存在、口に出すことが何となく憚れる存在、仲良くなってはいけない存在。今になって考えると子どもの時はそれで良かったのだ。近づきすぎると危険だったはずだ。

しかし今は違う。人生も半分を過ぎ、どう死ぬかとどう生きるかは表裏一体だということが分かってきている。

『人間臨終図巻 上』では、15歳から55歳までの死が取り上げられている。私が購入した角川文庫版では中・下と続いているようなので当然56歳以降の死が多く記述されていることになる。中と下は未読なのでまだなんとも言えないが、上では若い年での死が多いためか、亡くなり方も読んでいて辛い。人間はお互いに学ぶべきことがあるが、年長者に学ぶことの一つにどう死ぬかということもあろう。中・下を早く入手したいと思う。

山田風太郎『人間臨終図巻 上』(角川文庫)



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