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社会人のバトルロイヤル

 仕事が終わったらバトルロイヤルへ直行だ。俺は会社をでると早速仲間の三人とLINEをして家へと向かった。コロナで一番良かったと思うのはアホの上司から飲みの誘いがなくなったことだ。お陰で俺たちは真っ直ぐバトルロイヤルの世界に飛び込める。

 バトルロイヤルのメンバーはみんな俺の友達だ。まず一人目は俺をバトルロイヤルに導いた高校時代からの親友。二人目は大学時代からの親友。最後の一人は会社の同僚だ。俺たち四人は会社員だけど、当然ストレスがぷよぷよみたいに積まれた日々を送っている。そんなぷよぷよな毎日を吹き飛ばすのに打ってつけなのがバトルロイヤルだ。俺がバトルロイヤルをやりはじめたのは二年前。高校時代の友達か誘ってきてからだ。奴はバトルロイヤルがいかに面白いかを俺に喋り出した。まるでリアルに銃で撃ってる感じがする。バトルをずっとしてるとたまにヘッタクソな奴らがいるからそいつらを狙い打ちすると超楽しい。そいつらホントに馬鹿ヅラ晒して死んでくから、俺そいつを思いっきりディスってやるわけよ。『おじいちゃん。ボケてこんな所に迷い込んじゃダメだよ。こんな風にアホな脳みそ撃っちゃうからねって』。奴がこう嬉々として語ったけど流石に最初は引いた。だけど一回やってみたらズッポリハマってしまった。それでまずそいつとチーム組んでそれから大学からの友達と会社の同僚を誘った。それからいつもこんな感じでバトっている。

 家に帰るとすぐPCを立ち上げてデスクトップにつけてあるバトルロイヤルのアイコンをクリックする。たまんないぜ。今夜も山のようにバカどもを殺してやる。俺はゲーム画面に入りすでに待っていたチームメイトに挨拶をして戦場に駆け出す。さぁ、早速人殺しを始めようぜ!

 俺たちは強そうなやつを出来るだけ避けて移動する。一人で参加している奴には要注意だ。大半は入りたてのぼっちで喋りかたさえわからずにすぐ死ぬけど、中にはとんでもない猛者がいる。この間からかい半分に一人で無言で立っている奴を四人でボコボコにしようとしたけど一瞬で返り討ちにされた。今日はそんな事は勘弁だ。だから向かってくる連中を適当にあしらっていぢめがいのありそうな獲物を探して俺たちは戦場をさまよう。

 そして俺たち四人はいぢめがいのある獲物をみつけた。ケッ、こいつのモデルうちの上司とそっくりだぜ。なんか見ているだけでムカついてくる。コイツは仲間と「部下から勧められてはじめたんだけど、どうしていいかわからないよ」とか抜かしやがる。俺他の三人にターゲットはコイツらだと合図を送った。高校時代の友達と大学時代の友達はすぐにOKしたが、何故か同僚は反対しやがった。素人さんいぢめは良くないとか抜かしやがる。俺たち三人はテメエも散々いぢめしといて今更正義ヅラすんなと怒鳴りつけると三人て獲物を襲撃した。俺たちはすぐさま上司そっくりな奴の仲間を仕留めると今度は三人て上司もどきを揶揄ってやった。「死ね、このクソバカ!」「お前うちの上司そっくりにしてんじゃねえ!次に参加するときはもっとまともな顔にチェンジしろ!」「次に会うときはもっと優しくいぢめてあげるから!」とか言ってマシンガンでボコボコに打ち抜いてやった。その上司そっくりな奴は仲間から貰ったのか大量の回復剤をもらっていたがそれでも三人の一斉射撃にかなわけがない。上司は倒れもうミンチにされるがままだった。ざまあみろ!俺は調子こいて引き金を弾きながらPCの前で叫びまくった。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」


 その翌週の月曜日。会社にきたらいきなり青白い顔した同僚がやってきて挨拶もそこそこに俺にこう言った。なんでも上司が俺に休み時間に面談室に来いと言っているらしい。なんでだと同僚に聞いたが、奴は何故か口籠もっていた。特に仕事でミスしたわけでもない。やんちゃしたわけでもない。全く問題なしの俺がなんで呼びつけられなきゃいけないんだ。俺は仕事中の間そんな事を考えていたが、休憩時間が来たので俺は面談室に向かうために席を立ったが、そこにまた同僚が、さっきよりももっと青白い顔をして、やってきた。

「……あのさ、言いにくすぎるんだけどさ。俺この間あの人にバトルロイヤル勧めちゃったんだよね。あの人プレステ1止まりで最近さゲームなんかスマホでもやらないって言ってたからどうせやらないだろうって思って面白いっすよってゲームの内容を話したんだけど……まさか参加するとは思わなかった。本当に申し訳ない!お前に何もない事を祈るしかない!」

 世界が崩壊するってこんな感じなのか。俺は自分の足元がぐらつくのを感じた。ああ!まさかあの上司そっくりのモデルが上司本人だったなんて!俺はフラつきながら面談室に向かった。

「昨日はいぢめ尽くしてもらってありがとよ。お前のお陰で一緒に参加してくれた部下からもらった回復剤全部使っちゃったよ。だけど俺はお前がそういう奴だとは思わなかったよ。お前俺がマシな顔してないって思ってだんだな。俺はお前が仲良くしている同僚から聞いて久しぶりにゲームやろうって思ってさ。純粋にゲームを楽しもうとして参加したんだよ。その俺をお前は仲間と散々バカにして、狙い撃ちにして、挙句の果てにはオラオラオラオラとかジョジョの真似してくれたよな。それが初心者に対する態度なのか?お前は普段も他人に対してそういう態度をとっているのか?答えろ!」

「申し訳ありませんでした!」

 俺はそう叫びながらジャンピング土下座して頭を床に叩いて謝った。上司はその俺を笑顔で見下ろして言った。

「今日仕事が終わったらバトルロイヤルしようじゃないか。君は一人で僕らのところまで来てくれたまえ。それで全部水に流そう。僕だって子供じゃないんだからいつまでもこんな事に拘らないよ」

 その夜俺はバトルロイヤルに入るともう目の前に上司たちがいたのでびっくりした、よく見ると上司たちの中に同僚もいるではないか。ああ!なんて事だ!その俺に対して上司は言った。

「たった一人でご苦労様。まぁ逃げるに逃げられないもんなぁ。それじゃ昨日のお返したっぷりしてやるわ!」

 そう言うと上司たちは一斉に僕を射撃した。俺はもう言葉を喋ることも動くこともできない。同僚も上司に混じって俺を打ってくる。ああ!この野郎上司に媚びへつらいやがって!上司のやつは俺にすみませんでしたとか謝れとか抜かして昨日の俺のようにジョジョの真似をしはじめた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

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