ダイヤ騎士、金箔騎士、鉄板騎士
昔々とある王国に三人の騎士がいました。一人目は大富豪のいつもダイヤの鎧をつけている騎士。二人目は小金持ちの金箔の鎧をつけている騎士。そして三人目は鉄板の鎧をつけている貧乏人の騎士でした。
この鉄板の騎士はダイヤの騎士と金箔の騎士を大変羨みました。ダイヤの騎士は見栄えが大変よく、金箔の騎士もダイヤの騎士にこそ劣るけど自分に比べたら遥かに見栄えが良かったからです。鉄板の騎士は何故自分も二人のように金持ちに生まれなかったのかと悲しみましたが、しかし悲しんだ所でお金持ちにはなれません。
騎士は自分の未来に絶望して身を投げようと歩いて湖にまできました。そこで鉄板の鎧を着たまま水に飛び込もうとしたのですが、その時ペレー帽を被った老人が現れたのです。老人は飛び込もうとする騎士に向かって諌めました。
「これお主、若きものが早るでない。わしに事情を話せ」
すると騎士は涙ながらにこう言いました。
「何処ぞの仙人様。わたしは騎士ですが、家が貧乏のため鉄板の鎧しか身につけられません。わたしもダイヤや、せめて金箔の鎧を身に付けたいのですが、一生頑張っても絶対に買うことができないのです。だからもう諦めて死ぬことにしました」
こう鉄板の騎士が涙ながらにこう語るのを聞いて仙人は深く騎士を憐れみました。仙人はこの憐れな騎士に何をしてあげれば良いかと考えたのですが、ふとある事を思いつきました。これならばこの憐れな騎士は幸せになるじゃろう。仙人は騎士の兜の真ん中で指を回しエイと気合いを入れて兜を押しました。
「これでそなたはダイヤでも金箔でも鎧に無限に描く事ができるぞ。確かにそれはダイヤでも金箔でもないただの絵じゃが、それは本物よりも本物らしいのじゃ。さぁ鎧にお主の描きたいものを自由に描くと良い。きっと皆びっくりするじゃろうて」
仙人はこう言い残すと再び湖の中に消えていきました。一人残された鉄板の騎士は脱いだ鎧に半信半疑で指でダイヤや金箔を想像して描いてみたのです。すると不思議な事に鎧はダイヤと金箔で輝き始めたではないですか。しかも仙人の言う通り本物よりも本物らしいだけでなく、なんと本物より遥かに美しかったのです。
もはや僕は鉄板の騎士でなくなったぞと騎士は大喜びで自分のダイヤや金箔が散りばめられた鎧を街のみんなに見せてまわりました。みんな昨日まで鉄板の鎧をつけていた騎士がダイヤと金箔の鎧を着ている事にビックリして目を丸くしました。
だけどびっくりしたのは街の人々だけではありません。鉄板の騎士を馬鹿にしていたダイヤの騎士や金箔の騎士も唖然とするほど変わった騎士を見て街の人たち以上に目を丸くしたのです。これは大変だとダイヤの騎士は言いました。みんなを呼んでこなきゃと金箔の騎士は言いました。
他の騎士たちがみんな新しくダイヤと金箔の鎧を着た騎士を見に彼の側にやってきたのです。みんなマジマジと騎士の豪華な鎧を見ました。騎士はこんなに興味津々に他の騎士から見つめられたことがなかったのですっかり有頂天になってしまいました。しかしです。他の騎士たちはウンウンとしばらく頷き合った後、一斉に鉄板の騎士を指してこう言い放ったのです。
「コイツやはり偽物のダイヤと金箔を身につけているなっ!おい鉄板の騎士!お前をダイヤと金箔を偽造した罪で逮捕する!」
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