中抜きゴーストライター
某出版内でとあるアイドルの小説の企画が立った。
しかし勿論アイドルは忙しいししかも文盲なのでゴーストライターが必要だった。
というわけでゴーストライター界の大御所でもう時期したら自分の名前で初の単行本を出す予定のA氏に代筆を依頼した。
だけどA氏は自分の単行本の構成作業で忙しくてもうゴーストなんかやっている暇などない。でも依頼を受けなきゃせっかくの初の単行本も出版できなくなるかもしれない。
だからA氏はゴーストライター界の後輩のB氏にゴーストを依頼した。
だけどB氏も別のイケメン俳優のエッセイのゴーストで忙しかった。B氏は断ろうとしたが断ったら先輩のA氏から仕事が貰えなくなるのを恐れた。
だからB氏も友達の売れてないゴーストライターのC氏に自分のゴーストを依頼した。
C氏は売れてないのでこのアイドルのゴーストに乗り気だったが、ゴーストを始める前にアイドルの調査をしてやっぱりダメだと投げ出した。
だからC氏も友達の多少人気のあるブロガーに自分のゴーストを依頼した。
D氏もアイドルのゴーストで名を売ってライターデビューしたかったが、よく考えればアイドルなんか知らないから自分には無理だと思った。
だからD氏も友達のアイドルヲタクのE氏に自分のゴーストを依頼した。
そうして人から人へとゴーストは移り今アイドルのゴーストを書いているのはガンギマリしたアイドルヲタクのZ氏である。
Z氏はこのゴーストライターをほぼ無償でやっている。中抜きに次ぐ中抜きで原稿料は原稿用紙代の十分の一だ。だけどZ氏は電気代さえ払えぬアパートでロウソク片手にコンビニで充電したスマホに一心不乱にアイドルの文章を打ち込んでいた。Z氏は漫喫で見たテレビやDVDで見たアイドルの口調を気持ちの悪い顔で真似ながら必死に文章に落とし込んでいた。