待ち人来たらず
時間はとっくに過ぎていた。百均で買った時計の針は待ち合わせ時間から90°を回っていた。男はガックリと肩を落としこうなるんだと思っていたと吐き捨てるように言った。予測していた結末をそのままなぞったこの事態に涙さえ出て来た。
男は出会い系サイトである女と知り合いになり、そして何度か会話してこのデートにまでこぎつけた。彼は思わぬ幸運に舞い上がったが、その一方でこういう事態を予測していた。騙されたんだ。きっとあの子はどっかに隠れて僕を見て笑っているんだ。もしかしたら仲間と一緒に僕を笑っているかもしれない。動画なんか撮ってYouTubeにあげて出鱈目なキャプションつけて適当に編集して僕をただの変態だと面白おかしくいぢっているのかもしれない。ああ!そうなったら人生終わりだ。いや、そうならなくても人生なんかとっくに終わっているんだけど。
男はこみ上げてくる被害妄想に耐え切れずその場にしゃがみこんだ。もう終わりだ。いい加減こっから出て行こう。男は立ち上がってスマホを手にした。
するとスマホにメッセージの通知が来ていた。彼は誰だろうと思ってスマホを開けてメッセージを見た。それはなんとあの女のものだった。
『ねえ、どこにいるの?私ずっと○○駅で待ってるんだけど。ひょっとして来ないつもり?』
男は女が○○駅で待ってるというメッセージを読んで彼女が待ち合わせ場所を勘違いしていることに気づいて思いっきり笑った。なんだよ、君っておっちょこちょいだなぁ。彼はすぐに女に今すぐそっちに行くからと返信した。
でも男は女に会えなかった。女の代わりにそこにいたのは怖いお兄さんで、お兄さんは青筋立ててウチの女を込まそうとしたなと凄んできた。男がゴメンなさいと謝るとお兄さんはじゃあ俺のいう事聞いてくれたら許したるわ。と言って男を車に乗せてどこかに連れて行った。
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