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歴史のIF:猿から人間へ
猿の群れで生きるのは厳しい。その厳しさは『厳しい』という言葉ですら温泉のように気持ちのいい湯だなあ~という意味に聞こえるほどだ。猿の群れの中では常に闘争が行われている。群れでの戦いを勝ち抜いてボスになったとしても決して油断は出来ない。彼の地位を狙う者が手ぐすねを引いて待っているからだ。しかしそうしてボスの地位を守り続けたとしても結局最後に彼はボスの地位を追い払われてしまう。年には勝てないからだ。彼は挑みかかって来る若い連中にボロボロにされボスの地位を追い払われてゆく。そして彼はボスからいきなり群れの下っ端の地位に落とされ、誰にも助けられぬままどっかの森でのたれ死んでしまう。
そんな猿のボスのなかに他の猿よりも知性のある一匹の猿がいた。その猿は近づく政権交代に怯えながら暮らしていた。どうしたら政権交代を回避できるか。それを考えた猿は若者の猿に群れの雌をあたえることを考えた。だがそれだけでは所詮猿なので恩義など忘れてしまうだろう。だから彼は次にこう考えたこの若者たちに自分の代わりに餌を取りに行かせ、獲ってきたものだけに雌を与えたのだ。さっそくボス猿はその考えを実行してみた。そしたら驚くほど上手く言った。猿は雌欲しさにウキー!と獲物を差し出してかわりにボスから雌を頂いたのだ。ボスはこの方法が予想以上に成功したので子供に次々と同じように餌付けをしたのだった。
やがて時が経ちボスも年を取り普通ならば確実に政権交代が行われるはずだったが、何故かボスの群れでは政権交代が行われなかった。それどころか老いも若きももはや満足に動けなくなったボスを支えて歩くのを手伝ってまでいるではないか。猿たちに支えられたボスはその威厳のある口元を開いてウキー!と鳴き出した。すると雌ざるが大挙して登場し若猿たちが鼻息を荒くして森へと向かってゆく。しかしたまにはいたずらっ子の猿がいて年老いたボスをからかうことがあった。しかしそんなときは仲間がすかさずウキー!と鳴いてその猿を叱り飛ばした。彼らはこの時猿から人間への進化の一歩を踏み出したのだ。彼らは進化するためにボスから貴重なことを学んだのだ。年寄りは尊敬しろということを。