三月ももう終わりなので

　かけうどんの美味しい食べ方を教えます。もう散々語っているのでうんざりした方も多数おられるでしょう。もう耳にタコが出来たって耳がタコ状に膨れ上がって耳鼻科に行かれている人さえおられると思います。しかし皆様にはもう一度だけ私の話を聞いてもらいたいのです。

　皆さん、人生は長いように見えて短いものです。明日から四月ですが、一瞬にして七月、十二月、三月となり、気づいたらいつの間にか来年の四月になっているのです。人生の慌ただしさに翻弄されているうちにもう晩年ってこともあるのです。その長くて短い人生をどう生きるかというのは私たちにとって最も重要な問題でありますが、皆さんはそれについてどう考えているのでしょうか。このまま何もせずに人生を終えたいなんて方は殆どいないと思います。大抵の人は何かしら成し遂げたいと思って日々を過ごしていると思います。だけど日々の仕事やその他諸々の事情によって結局は何も成し遂げられぬまま一生を終えてしまう方が大半だと思います。何も出来なかったけどそれでもいい。人はそういう時こう自分に言い聞かせて無理矢理自分を納得させるものです。

　しかしそれで良いのでしょうか。例えば私の間近にいる人は私が好んで食べている天かす生姜醤油全部入りうどんを食べもせずにキモいとかうどんにゲロ吐くなとか嘲笑します。しかしそれは彼らが天かす生姜醤油全部入りうどんを食べるという人生の一歩を踏み出すのを恐れているからです。要するに彼らは天かす生姜醤油全部入りうどんを食べるという事を成し遂げた私を妬んでいるのです。彼らは天かす生姜醤油全部入りうどんを食べるという人生の一歩を踏み出した私と、何も成し遂げられず、ただ出されたかけうどんを食べている自分を比べていかにこれまで自分が何もしていなかったかを思い知らされ、それが悔しくて天かす生姜醤油全部入りうどんを食べて人生を満喫している私を嘲笑したのでしょう。彼ら私を嘲笑する事で人生の第一歩を踏み出せない自分の勇気のなさを隠そうとしたのです。

　だけどそんなごまかしがいつまで通用するでしょうか。彼らはきっと死ぬ寸前になって自分の人生を悔いるでしょう。俺は何も成し遂げられなかった。せめていつかのあいつみたいに天かす生姜醤油全部入りうどんを食べることぐらいしておけばよかったのに。

　そうならないように今回私がまた天かす生姜醤油全部入りうどんの美味しい食べ方をお教えします。あの、何度も言わないのできちんとメモは取ってくださいね。まずはかけうどんを注文してそれを受け取ったら薬味コーナーに行ってください。そこで最初に天かすを山盛りに振りかけます。エベレストぐらい高くかけた方がいいでしょう。そしたら次は生姜です。生姜は大さじ一杯から二杯。これはエベレスト山頂の山小屋を想像して量を決めた方が良いでしょう。例えばエベレストの山頂に沢山の登山者が登ってきたとします。その彼らを全て山小屋に入れるにはそれなりの大きさを持つ山小屋が必要なのです。といって大き過ぎてもダメです。大き過ぎたら頂上に収まりませんからね。何事もバランスです。そして最後に醤油です。醤油は五回まわしでかけましょう。なぜ五回かというとそれはご縁がありますようにというおまじないなんですよ。

　そうして天かす生姜醤油全部入りうどんができたらあとは食べるだけです。しかしこれはなんと美味しい食べ物でしょうか。私は気に入ったものを褒めるために他のものを腐す行為はあまり好きではないのですが、天かす生姜醤油全部入りうどんに関してははっきりいってキャビアやフォアグラや燕の巣やフカヒレ等比較にならないと思わず口に出してしまいます。天かすはまるで桜の花のようにふわりと舌を包み込むし、生姜は梅干しのようにキリリと舌を締めます。醤油は春の光景を描いた一筆画のようにうどんと天かすに深みを与えてくれるのです。

　私は天かす生姜醤油全部入りうどんを初めて食べた時世の中にこれほどの美味があったのかと感激しました。そして私は思ったのです。自分の人生は天かす生姜醤油全部入りうどんを食べ続ける事にあると。

　皆さんも勇気を出して天かす生姜醤油全部入りうどんを食べてみてください。きっとそれがあなたの人生の貴重な第一歩になるはずですから。ではこの辺でしつれいします。ちゃお！