トレンディドラマリターンズ
「今も髪伸ばしているんだ」
「そうさ、ロングヘアーにロングコートなんてトレンディドラマじゃあるまいし今更って人は言うけど辞める気はないね。君もずっとワンレンボディコンで生きているんだろ?」
「そうよ。私もワンレンボディコンで生きて来たわ。だけど年には勝てないわね。結局あの頃が一番輝いてたわ。どんなにボディコンを貫こうがあの頃の栄光は二度と戻ってこないのよ」
「違うよ、トレンディは過去なんかじゃない。今もずっと続いているんだ。東京タワーが今も僕らを照らしているように」
「フフッ、私はあなたのポジティブさが羨ましいわ。私は鏡を見ていつもため息をついてしまうの。もう……トレンディって無邪気に言える年じゃないんだって」
「何言ってるんだ?僕だって昔の写真と今の自分を見比べて落ち込むよ。だけどそうやって落ち込んでいたら、ある日突然ポックリといってしまうんだ。君も自分に自信を持てよ。ワンレンにボディコンを着た君は今も現役のトレンディさ」
「そうね、私あなたのおかげで勇気が出たわ。私一生トレンディに生き続けるわ」
「ところで話は変わるけど、君今日ここに来た連中の中にね、トレンディな連中がいたんだ。まさかと思うけど……」
「ああ!もしかしたらあの5人ってこと?そうしたらまた男女7人揃うじゃない!最高だわ。こうしてまた仲間たちと巡り会えるなんて!」
「トレンディを続けていればこんな風に奇跡は起こるのさ」
「そうね、まるでトレンディドラマみたいに」
その時二人の元に白衣のおばさん二人組がやってきた。
「あのね、おぢいちゃんとおばあちゃんいい?もう朝食の時間とっくに過ぎてるんだけど早く食べてくれない?さっきからずっと呼んでいるのになんで来てくれないのよ。いつもいつも人の言うこと無視して!」
「いや、無視しているわけじゃない。僕らは後期高齢者だから耳が遠いのさ」
「耳が遠いんだったらそのクソ長い髪切ればいいでしょ!あと二人ともいい加減ホーム内をそんな派手な格好で歩くのやめてもらえます?いい加減他の皆さんからも、それに近所の人からも不審がられていますよ。二人ともそれぞれ結婚してお孫さんまでいるのに恥ずかしくないんですか!」
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