『オリンピック初めて物語』
闘技場の門が重苦しい音を立てて開き、その中からアテネの闘技場に裸の男たちが現れた。今日この地で初めてオリンピックが開かれるのだ。選手たちは最初の競技の開始を待ちながら緊張の面持ちで会場に立っていた。選手は勿論全員男だ。彼らは大理石のように鍛え上げられ裸体を太陽に晒している。若者のアリオストも中年のゲルギオスも老人のプリダリウスも自らがここに立つ栄光を噛み締めて時を待っていた。彼らは自分の足元にある重石を見つめて緊張に震えた。自分に成し遂げる事が出来るか。いやしなくてはならぬ。彼らは各々村や街に残してきた家族を思い手を握りしめて全身の意識を集中させた。やがて何人かの男たちがやってきて厳かな管楽器の音と共に幕を下ろした。会場に響めきが鳴り響く。選手たちはもう興奮を抑えきれなくなっていた、そしてしばらくの沈黙の後に審判が競技の開始を告げた。
「選手諸君!このヤバすぎるぐらいいやらしい裸体像で見事ギリシャの男ぶりを示してみよ!裸体像は男と女両方使ってもよい!とにかく自分のやじりを奮い立たせ見事重石を浮かせて見せよ!」
この競技で誰が金メダルをとったのかは残念ながら今に伝わっていません。それもそのはずです。なぜならこの競技自体がオリンピックの歴史から抹消されているからです。まぁ、抹消されて当たり前だと思いますが……
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