アライメントについて
「alignment (アライメント)」とは、身体のポジションのことです。アライメントを意識するとは、ヨガのポーズをしながら、「手はどこに置くのかとか、足はどうするんだ」などの位置を考えることです。
「アライメント」は、ヨガだけではなく、ゴルフなど他のスポーツや医学用語やタイヤ交換などのこととしても、最近日本語でそのまま使われるようになってきたように感じます。
アライメントなど身体の各部分に意識を向け、微妙な違いに気づき、身体と繋がる感覚を磨くことは、ヨガをする際に大切なことです。
ただし、レッスン中にどれくらいアライメントに比重を置くかは、レッスン内容やインストラクターによってかなり違ってきます。
ポーズに細かな指示をして、身体を実際に触ってアジャストをして、適切なアライメントを正すことに力を入れてくださる先生もたくさんいます。
私も「アライメント」にフォーカスしたレッスンを受けていたことがあります。1つ1つのポーズを10-15分ぐらいかけて、正しいアライメントをきちんと説明したり直してもらうようなレッスンでした。
今の私は、どちらかと言うとアライメント重視のインストラクターではありません。それには主に3つの理由があります。
自分に合ったアライメントがある
もちろん怪我をしないために、ある程度のアライメントに気をつけることは大切です。
例えば、「牛のポーズ」と「猫のポーズ」をする時には、両手を両肩の真下に置き、両膝を腰の真下に置くことで腕や背骨の過剰な曲がりを防ぐことができます。
しかし、「正しさ」にこだわりすぎて、そこを目指すことに力を入れてしまうと、いつまで経っても自分の身体を受け入れることができなくなってしまい、ヨガの効果を半減させてしまいます。
例えば、ダウンドッグでは、身体を逆さまになった「v」の文字のようにして、おしりは高くキープしながら、かかとを床にくっつけるのが正しいアライメントです。しかし、このアライメントは、ほとんど人の身体の構造にとって、実際にするのは難易度が高すぎます。
正しいアライメントと現時点での自分を比べて、「もっと近づかなければ」「これではダメだ」と今の自分の身体の状態にダメ出しをして、自分を追いこんでしまうことになるリスクがあります。
そうやって自分を追いこんでいくと、ケガをするリスクも上がります。真面目な人ほど、正しいアライメントを目指しすぎてしまい、無理をしてしまうのです。
私は、ケガさえしませんでしたが、アライメント重視の先生のレッスンに通っていた時は、自分にダメ押しをだして必死になって頑張ってヨガをしていました。(こう見えても結構真面目なんです)!
1人1人の身体は違います。それぞれやりやすいポーズもあれば、苦手なポーズもあります。同じ人であっても、その日やその時の状態によって、身体は異なります。歳を重ねたり、怪我をしたりして、その時々で身体は常に変化していきます。できるポーズは、その時々で変わっていくのです。「正確で全ての人に絶対的に使えるアライメントは存在しない」と今の私は考えます。
怪我をしない程度の大まかなアライメントを理解したら、自分の身体を知り、自分にあったアライメントを自分で構築していくのが重要だと思います。完璧なアライメントでポーズを決めるのがヨガなのではなく、自分の身体とつながっていくプロセスがヨガだと私は考えます。
他の方や見本のポーズに振り回されすぎずに、無理をせず今できる自分なりのポーズをしていくことが大切だと思います。
身体で感じる
アライメントは、頭や理論で考えすぎずに、身体で感じることの方が大切だと思います。実際にポーズをしながら、身体の位置をちょっと変えることでそのポーズがもたらす身体の感覚が大きく変わってくることでわかります。
それは、手取り足取りインストラクターから指示してもらったことを頼りにして、ただロボットのようにポーズをしていくのではありません。自分でちょっと工夫して、自分で感じながら、実際にポーズをしていくことによって、できることだと思います。
例えば「足の後ろが伸びないなぁ」というちょっとした違和感を感じた時に、「ちょっと膝を曲げてみたいなぁ」という自分の身体の声に耳を傾けて、それをしてみるんです。
そして、その後の感覚に意識を向けましょう。「あー、楽になったし、心地よい」「呼吸が深くできる」なんていう感覚がでてきたら、自分のアライメントを確立したことになります。
呼吸や身体の感覚を感じながら、インストラクターの見せてくれるポーズをイメージしながらも、自分ができる自分らしいポーズをしていけば良いのです。
何回も言いますが、ヨガはポーズをどれだけ正しく美しくすることを競うスポーツではありません。それでは、体操になってしまいます。
何歳になっても、ヨガを続けていくために、自分らしく無理なく呼吸を感じながら、ポーズをしていく方を選んでいきたいと私は思います。
レッスンのリズムやフローを邪魔しない
ヨガで一番大切なのは、呼吸です。アライメントにこだわりすぎて、正しいポーズをしようとすると、無理をして呼吸を犠牲にしてしまいがちです。
また、ポーズがきちんとできているかにこだわって、先生も指示を出していくので、レッスンが途切れ途切れになってしまいます。そうすると、気持ち良く流れるようにレッスン中に動いていけなくなります。
呼吸と動きが一致して、時間を忘れるほど集中できるような瞑想状態、またはフロー状態に入れるのがヨガの醍醐味だと私は思います。
アライメントにこだわりすぎて、レッスンをところどころで止めてしまっては、そんなフロー状態を楽しむことができません。
3つの理由を上げて色々言ったものの、アライメント中心のヨガをしているインストラクターの方を否定するつもりはありません。1人1人自分のスタイルのヨガがあって、それで良いと思います。
同じく私も、自分なりのヨガを続けていきます。そして私の生徒さんにも、自分なりのスタイルを確立してほしいと思っていて、このようにつぶやいてみました。