【短歌】かなしい
会いたくて悲しくないたひぐらしは会えると知って愛しいとなく
春、君が消えた。
その日は、憎らしいほど晴れていた。
いっそ雨ならば、君の足跡を追えたのだろうか。
何も言わずに消えた君の、軌跡を辿れたのだろうか。
悲しくて悲しくて、これ以上泣けないほどに泣いた。
朝日に照らされ、
蒼穹を眺め、
十六夜を見上げても、
涙は絶えなかった。
最後は、声もなく泣いた。
夏、声だけが聞こえた。
電話越しだから、君の声に蝉の鳴き声が被さる。
透明な君の声を、僕はいつ聞けるだろうか。
鼓膜を直接揺らすあの音がこんなにも遠い。
恋しくて恋しくて、思い出すたびにぽろぽろ泣いた。
一度流すと止まらない涙。
まだ声は上げられない。
秋、帰ってくると聞いた。
カナカナと鳴きだした。
朝も昼も夜も泣いた日々に終わりを告げるように、カナカナと鳴けた。
愛しい愛しい。
やっと、声を上げてないた。
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