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【短歌】 新米の季節


新米しんまいかかえて歩く秋の空今から仕込み芽吹めぶくは春か


【次の次の季節に思いを馳せる物語。】

時刻は19時30分。
星が、わが物顔で夜空に瞬いている。
信号待ちの間に、冷えてきた秋の夜空を見て、一息ついた。

2週間前にやってきた新人さんのフォローをしていた。気づいた時には終業時刻を超えていた。

これから下期に向けて忙しくなる時期だ。
だから自分自身、ばたばたしていている。

今日は、新人さんに声をかけながら業務することができなかった。

うまくいかないなあ。

来月はもっと忙しくなる。
その次は師走。
もっともっと忙しくなる。

はあ。
もう一度ため息をつきかけた時、青信号になった。

横断歩道を渡り、明るい商店街に出る。
疲れ切っていたので、ご飯を作るのが面倒になった。

お弁当を買おう。
そう思いスーパーに寄った。

自動ドアが開く。野菜売り場を早足で通り過ぎ、お惣菜コーナーに向かう途中で、それが目に入った。

新米10kg

令和の米騒動、なんていわれるほどスーパーから消えていたお米。どうやら、やっとスーパーに並んだようだ。

新米。

そういえば、もうそんな時期なのか。
こうして売られる新米もあれば、来年に向けて準備されているお米もあるのだろうな。

新米、か。

10kgのお米を見つめながら、私はこそっと笑った。

一年に一度きりの実りの季節。
これから、厳しい冬を超え優しい春を迎える。

もう新米の一部は、次の秋への仕込み始められてるんだろうな。

ふふ。


急がずとも、実りの季節はやってくる。

新人さんも、今すぐ実らなきゃいけない訳じゃないんだ。

来年の春に向けて、じっくり仕込もうじゃないか。何事も、冬を越す準備が必要だ。

ご飯を作る覚悟を決めて、私は2kgのお米を手にレジに向かった。

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勿忘草(わすれなぐさ)
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