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<番外編> 大好きな本を語る 和歌
「好きな本は何?」
そう聞かれて、
さすがに和歌を答えるわけにはいかないので、番外編を作りました。
1,始まりの和歌
どんな形で語るか、悩みました。
大好きな和歌があるのです。
その1首の和歌について語りたかったのです。
しかし、、、
「これ、本を語ってるんじゃなくて、和歌を語ってるんだよな~。」
そう思うと、なかなか語れませんでした。
そこで、よく考えてみました。
この世界には、私が大好きなものがあふれています。大好きな本を語り始めたら、大好きなものをもっともっと語りたくなりました。大好きをいっぱい語りたくなったのです。
よし。
大好きなものが本じゃなかったら、<番外編>にしよう!!
我ながら、安直な発想ですが、、、、、、
大好きなものを語りにきました!!!!!!
今回語りたい大好きな和歌は、『源氏物語』の中にある1首です。そのため、源氏物語の冒頭もちょっと語ります!
※今回は和歌を紹介するので、1首丸ごと紹介します。
『源氏物語』の内容に一部触れてしまいますので、ネタバレが嫌だという方は、ぜひ『源氏物語』を読んだ後でご覧ください。
ネタバレしても構わないという方は、ぜひお進みください。
2,大好きな和歌 ※『源氏物語』の内容のネタバレあり
ささ、紹介しますぞ~!!!!!
私が大好きな和歌は、、、、、
限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり
これは、『源氏物語』の主人公、光源氏の実母・桐壺の更衣が、病気のため宮中から出るとき、愛する帝に送った歌です。
桐壺の更衣は、もとは高貴な身分でした。
しかし、父親を亡くしてから、不遇な人生を歩んでいました。父親という後ろ盾がない桐壺の更衣は、宮中では身分が低く、それなのに帝の愛を一心に受けていました。桐壺の更衣より身分の高い女性たちが、それを許すはずもなく、、、
いじめられ、
病気になって、
宮中を去らねばならなくなったのです。
宮中を去ろうとする桐壺の更衣に、帝は言いました。
〈置いて行かないでくれ。〉
その言葉にないする返答が、この和歌です。
※以下は、参考文献片手に、わかりやすくなるよう区切りながら勿忘草が訳しました。
〈私の命は限界だけど、あなたと別れるこの道は悲しい。私は、あなたと共に生きる命の道を、行きたい。〉
結局、桐壺の更衣が宮中に戻ってくることはありませんでした。
3,儚く強い人 ※『源氏物語』の内容のネタバレあり
桐壺の更衣の人生は、決して恵まれたものではありませんでした。
本来なら守ってくれるはずの父を亡くし、
身分が低くても懸命に生きて帝の愛をもらえたのに、
そのせいで周りの人にいじめられる。
最後は病気になって、、、
それほど辛い人生を歩んできた女性の最後の願いは、「いきたい」でした。
それは、「生きていたい」と「生きる道を行きたい」を掛けた掛詞でした。
なんと儚い人なのでしょうか。
なんと強い人なのでしょうか。
人生を儚んで諦めるのではなく、
最後の最後まで生きようとする、美しい人。
私はこの和歌を知ったその時から、この言葉がずっと胸に刺さっています。
4,いつまでも名作 ※『源氏物語』の内容のネタバレあり
三十一文字であらゆる感情や風景を詠う、和歌。
一瞬で過ぎ去る心の動きを、
刹那に消える風景を、
言葉で残す。
万葉集を始め、日本には多くの和歌が存在します。
今回、私が語った和歌。
実は『源氏物語』にある全795首の最初の1首です。
多くの恋を、
多くの愛を綴る『源氏物語』。
最初の1首こそ、光源氏の実母・桐壺の更衣が帝に送った、痛切な愛の歌だったのです。
―――あなたと共に、行きたい。
―――あなたと共に、生きたい。
生きてほしかった、と物語の登場人物に願ってしまいました。
あなたにも、ありますか?
一生忘れない歌が。
胸に突き刺さって抜けない、短く鋭い言葉が。
《参考文献》
・『源氏物語 1』 角田光代訳 河出文庫
・『源氏物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 谷口広樹著 角川書店編集
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