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【読書感想】「傲慢と善良」〜色んな感情が入り乱れました〜

「傲慢と善良」辻村深月 著

映画化されて、初めて存在を知った。
藤ヶ谷太輔さんと奈緒さん出演。
まず小説を読んでみたいと思い、手にとった。

ハードカバーで414ページ。結構分厚い。
辻村深月さんの本は初めて読んだけど
とても読みやすかった。


本屋大賞『かがみの孤城』の著者が、現代に生きる私たちの生きづらさを描き出す、圧倒的な“恋愛”ミステリ。書店ランキング、続々、第1位。

婚約者が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架(かける)は、彼女の「過去」と向き合うことになる。進学、就職、恋愛、友情、結婚、家族。あらゆる選択を決断してきたのは、本当に「私自身」なのだろうか。

帯より


前半6割を占める第一部が、西澤架目線、後半の第二部が、婚約者である坂庭真実(まみ)の目線のストーリー。

結婚を控え、寿退社した翌日、真実が突然の失踪。真実がストーカー被害に遭っていたことから、架は失踪の原因がストーカーに関係すると考え、真実の過去から失踪に繋がる糸口がないかと、必死で探す。

この過程で描かれた、婚活を通しての「異性への感情」、「娘への親の接し方」などの表現で、言語化が秀逸だと思った。

真実の実家は群馬県。考えが古いのか、地方がゆえなのか、娘のことを自分の思い通りにしたい母親。そして自分の娘は優秀だと思いたい、決めつけ発言。読んでいてイライラする程にリアルな描写だった。

また架が婚活中に感じた「ピンとこない」とは、婚活で何人もの異性に会った、率直な思いだろう。実は私も過去に婚活の経験があり、図々しくも同じように思ったことがある。自分のことは棚に上げ、なんと傲慢なことだろう。

真実目線での描写でも、ハッとさせられた部分がある。婚活で会った相手、しかもちょっと違うかな、と思った相手に対して、

どこかの誰かと、とっくに結婚していてもおかしくなさそうなタイプの人だ。私はそうじゃないけど、こういう人を選んで結婚する人もいるんだろうな。もし自分が婚活じゃなくて、同級生の夫として紹介されたら、へぇよさそうな人だなと、ひょっとしたら思っていたかもしれない。

本文より


仮に友人が選んだ相手としてはいい評価なのに、自分の結婚相手としては見られない。これもまた、なんと傲慢なことか。

この考えに対し、誰かから「断ったらすぐに別の誰かと結婚しちゃうかもよ」と言われた時に、真実が考えたことは、

羨ましかった。
その人と結婚できて羨ましい、ではなく、私が結婚相手に見られなかった彼を、結婚相手に見られて羨ましなあ、という羨み。

本文より


これを読んだ時、本当に傲慢だと思った。自分のことを何様だと思っているのか。どんだけ上から目線なのか。

腹立たしくも感じた。そう感じるということは、きっと私も真実と同じだからだ。実際私も、かつて同じことを考えたことがある。正確に言うと、その時はそう思ってなかったけど、この文章を読んで、私はまさにこれだったなと、今気付いたのだ。私はなんと傲慢だったのだろう。本当に恥ずかしくなった。私の婚活がうまくいかなかったのは、他ならず私の傲慢さゆえだったのだ。


この本を読んで、色んな感情が溢れた。
架に対して「ストーカーだと本当に信じているのか?」
架の女友達に対して「友達の婚約者にそこまで言うか?!」
真実に対して「主体性はないのか??」
自分に対して「過去の私、傲慢過ぎるだろ。あ〜戻ってやり直したい!!」

少し落ち込み気味になったので、最後に、前向きになれた、真実の前職での友人ジャネットの言葉で締めくくる。

あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、人生はあなたの好きなことだけでいいの。興味が持てないことは恥ではないから。

本文より


同感だ。
こういう考えが私は好きだし、こう言ってくれる友人がいて、真実は良かった。真実はジャネットと仲良くしたらいいよ。



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