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【エッセイ】かすかすぎて、消えることのない

美しさを手放したくなくて繋ぎ留めておきたくて泣いている

汚い、ということさえ言葉のうえでは綺麗になってしまう。言葉はいつだって綺麗だ。言葉に罪はない。心と言葉が出会い損ねるのがいけない

偽りしか愛することができず、偽りだからこそ愛することができる

「本当」は、それを愛することができないからこそ、尊い

孤独を徹底して突き詰めれば、そこには誰もいなくなる。

止まった心臓は実は止まってなどいなくて、私たちには知覚できないほど微細な痙攣を、まだ続けているのだと思う。そしてその心臓のかたちが失われても、その微かな痙攣だけは残りつづける。

あまりに微かなものは、失われることさえできない。言い換えれば、それは本当にも嘘にもなれない。

信じられたとき、それは嘘になる。だが、それがかけがえのないものになる可能性はそこからはじまる。

おそらくきっと、嘘も本当もどうでもよくなるところまでやってきて、信じることは信じることになるのだろう
なにかを信じているのだと私たちに思わせる人たちに共通しているのは、その人たちが嘘と本当をまるで分け隔てせず平等に扱っていること
彼ら彼女らは、本当と同じくらい嘘についても知り抜いている

涙には、嘘と本当が溶けている。けれどもそこにはなにかが足りない。少なくとも、そんな予感がつきまとっていて、だからこそとめどなくあふれてくるのだろう
一度流された涙は止まることがない
涙そのものが止まっても、その微かすぎるほどのとめどなさが、そこにとどまりつづけているのだから


読んでくれて、ありがとう。

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