随意運動の発現過程と運動制御について解説!【For 理学療法士、作業療法士】
こんにちは。
理学療法士 兼 イラストレーターの〇っち~です。
いきなりですが、みなさんは自分が身体を動かす際にどのような工程を踏んでいるか知っていますか?
また、どのようにしてその運動をうまく遂行できるようにしているか知っているでしょうか?
こういった考えはいわゆる『脳科学』や『ニューロリハビリテーション』等の分野として近年よく聞くようになっています。
「そんな難しいこと考えたこともないよ!」
「複雑でややこしそうな話だなぁ…」
「そんなことを知って何になるの?」
脳科学的な話が苦手な人からは、こんな声も聞こえてきそうな内容ですね…
ただ、実はコレ、
脳卒中や神経難病等の治療にはもちろん、整形外科や小児などすべての分野のリハビリを行う上でとても重要な(中核を担う)知識になります。
例えば、THA(人工股関節全置換術)後の患者を想定してみましょう。
術前から股関節外転MMTが3レベルで荷重時痛もあり、トレンデレンブルグ歩行を呈していた人が、
術後疼痛がなくなり股関節外転筋力もほぼ5レベルまで改善したにもかかわらず、トレンデレンブルグ歩行が継続して見られていたとしましょう。
この時、何が原因でトレンデレンブルグ歩行が改善していないのか説明できるでしょうか?
学生や臨床1年目の方の場合は『???』となるかもしれません。
少し臨床経験を積んだ2~4年目の方は『筋力がついても動作の中でそれを使う経験ができていないから』と答えられるかもしれません。
このような回答は臨床経験を積む中で自然とできるようになるでしょう。
でもこの『経験』というワードはやや口語的で『ふわっ』とした表現であり、治療対象を絞り切れていないように感じます。
いわゆる『経験』には『脳の運動記憶』が関与しています。随意運動の発現過程や運動制御の理論を勉強することで、このような口語的・感覚的な表現でなく、なぜそのような運動になっているのか、どこに治療の焦点を合わせるべきか、どのような指示や介助での介入が有効かが整理できるため、治療の選択肢が大幅に増えてきます。
そうすると、整形疾患、中枢疾患、脊髄損傷、上下肢切断などどんな疾患を前にしたときでも評価・治療がしやすくなります。
そこで今回は『ヒトが運動する仕組み』について、「ザックリ」と、でも「要点はしっかりと押さえて」お伝えしようと思います。
身体を動かす際に「…こんな手順を踏んで運動しているんだな!」と自分の生活に落とし込んで考えられるようになって頂けると幸いです。
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①随意運動をする時の流れ(発現過程)
まずは人が運動をする時どのような過程を経て運動しているかを知っていきましょう。人が運動(行動)を発現する時は以下のようなメカニズムで行われると言われています。
初めて見ると少し複雑で取っ付きにくく感じるかもしれないので、少し簡略化してみます。↓
これについて要点を絞って説明していきますね!
(※より詳細な脳領域や神経回路を考慮して作成した図・解説は最後に載せています。より臨床に活かすのであればこちらをご参照ください!!)
このような過程を経て私たちは自分の置かれた状況に適した行動をうまく遂行(=随意運動を遂行)しています。
では、例として『道に落ちている空き缶をごみ箱に捨てる』という状況で考えてみましょう!
A:感覚の統合と作業記憶(ワーキングメモリ)の生成
※人によっては空き缶を集めてお金を稼ぐ人もいます。
その人の置かれた状況によって同じものでも別の意味を持ち、
それによってその後の行動も変化します。
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