まだどの辞書にも載っていない言葉について
「すほみあ」
車で通り慣れた道も、夜に徒歩で通るとどこを歩いているのかわからなくなること。いつも見ているスーパーの灯りが異常に遠くに見えたり、まだ見えないはずの位置に葡萄畑が現れたりする感覚。時折本当にいつもの道から外れて、その境界線を歩いていることがあるので注意。
「のてそ」
盲目の人に空の青さを伝える術がないように、目の前の相手と感覚による疎通が絶望的に出来ないと悟ること
「れしてな」
眠る直前にふいに頭が冴え、さっきまで考えていた事柄が急速に脳みそから遠ざかっていくこと。目覚めたばかりの夢の記憶に似ているが、違いは、頭が冴えるまで「自分は色々な考え事をしており、ちっとも眠くない」と思っていること。
「にてほや」
映画観たいな、本読みたいな、絵を描きたいな、小説書きたいな、と渇望しながらも、寝ながらYouTubeを見てしまう現象。活用形に「にてほやす」があり、せめてもの抵抗としてYouTubeを見ながら筋トレを始めることを指す。
「おぷ」
世界の淵の錯覚。そんなわけないのにここが世界の果てのような気がしてしまう。夜の散歩中に、近くの畑から腐った柿のにおいがしたり、普通の通りを曲がったら急に外灯のない広い道に出てしまったりして「すほみあ」と繋がって感じることが多いが、「どこを歩いているか曖昧だが、この先はないかもしれない」という、怖さやワクワク、懐かしい感じも混ざることが多い。
ダイエットのために夜散歩にはまり、生まれた感情に名前を着けた。名前は目を閉じて適当にスマホの文字の上を触った。
きっと明日には忘れてる。