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オルターエゴ読書感想文13│グラン・ヴァカンス

『ALTER EGO』というスマホゲームがある。このアプリに出てくる読書記録まとめ13回目。


今回読破した本

『グラン・ヴァカンス』

飛浩隆 (2006), 早川書房.

永遠の夏をイメージした仮想リゾートが舞台。ここには現実から逃避してくる人間を迎えるためのAIが暮らしている。しかし1000年前に突然人間が訪れなくなった。それにも関わらず、何故か仮想リゾートの電源供給はストップしていない…。

永遠に続くかと思われた1000年にも及ぶAIの夏休みが、ある日突然 謎の蜘蛛たちの襲来によって終わりを迎える。

気づいたらどんな終息に向かうのだろうか?という気持ちに追い立てられて一気読みしてしまったのだけど、最初はなんだか気乗りしない本だった。なんでだろう?描写がなんだかちょっと淫靡な感じだから?冒頭を読み返してみてもなんで気乗りしなかったのかよく分からない。

設定として記憶にある思い出をAIが懐かしむシーンが度々あり、実際には起きたことがないこととしてAIたち自身も理解しているものの、その設定(記憶)によりそれぞのAIの性格が形作られている。また、物語のところどころにAIたちの性の描写が散りばめられている。性は生ということか?AIも生きているとそういうことだろうか。

この作品では全く人間界の様子が描かれていない。次回作では人間界のことが描かれるのだろうか?あまりにも人間が出てこないので、もはやAIが人間であると錯覚しそうになる。そもそも人間って何なんだろうか?

あとがきに、読まれなかった物語の登場人物たちという言葉があった。あぁ仮想リゾートのAIたちは人間という読者がいなくなった世界に暮らす物語の登場人物という解釈もあるのかぁとも思った。

本筋には関係ないのだけれど、作者の飛さんは本業を他に行いながら、日々2時間の執筆時間を確保して作家としても活動している二足のわらじをはく方だそうだ。フルタイム正社員としては、そんな作家のあり方も実現可能なんだと思うと夢があるなぁという気持ちと、どんなハイスペック人間なんだろうかと嫉妬する気持ちが湧いてきた。


未読リスト

残り9冊

■入手済み

夏目漱石 (2004), 『坑夫』, 新潮社.

グレッグ・イーガン著 山岸真訳 (1999), 『順列都市』, 早川書房.

宮澤伊織 (2018), 『そいねドリーマー』, 早川書房.

アンドレ・ジッド著 山内義雄訳 (1954), 『狭き門』, 新潮社.

アルベール・カミュ著 清水徹訳 (1969), 『シーシュポスの神話』, 新潮社.

■未入手

種田山頭火 (2000), 『草木塔』, 日本図書センター .

フョードル・ドストエフスキー著 江川卓訳 (1970), 『地下室の手記』, 新潮社.

メアリー・シェリー著 森下弓子訳 (1984), 『フランケンシュタイン』, 東京創元社.

シオドア・スタージョン著 永井淳訳 (2006), 『夢みる宝石』, 早川書房.

■過去の感想はこちら


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