プールサイドのくちびる幽霊色
拝啓 出雲にっきさま
にっきちゃんこんにちは
ひだりききクラブ2周年を迎えましたね❕
めでたいめでたい🎂🎂
ひだりききクラブの活動を続けていくことも、イベントやラジオで喋っている時も、にっきちゃんがいればいつも大丈夫だって思えます。わたしたちは別々の人間だけど、ひだりききクラブは一人一人というより、半分ずつでひとつな気がしているのです。
たまに正反対な句やエッセイを書くのに、一緒になると不思議と調和しているのがわたしたちの良さなので、それぞれの得意な表現を極めていろんな味のするユニットにしていきたいです。甘いもしょっぱいもやるぞ…！
これからもひだりききクラブの相方としてよろしくお願いします💐
さてさて、前回の交換日記は3年目のはじまりにふさわしいような、にっきちゃんらしさ極まった自由律俳句がたくさん見られました。今までの活動の賜物…🏅
トンビとろんと溶け夏ですから
文字感もゆるくて気持ち良く、見ていてとろけそうな一句。「トンビとろんと溶け」まで軽やかに進み、「夏ですから」という言葉で締めている構成が人間味があって好きです。カタカナとひらがなと漢字が混在している点も、暑さで意識が散漫になっている様子を「トンビとろんと溶け」の文字の雰囲気と合わせて想像しました。
空から食べものを狙っているトンビも、この暑さでちょっとだけとけてくれたら、人間たちはゆっくりサンドイッチを食べられるのにな…🥪
下降します花束は網棚へよろしく
前回の交換日記の中で、個人的に一番不思議な味わいのある句。この句の主人公はどこかへ去るけれど、そこに悲しみはない、とてもニュートラルな印象を受けました。下降してゆく中、花束みたいな魂だけが浮かび上がり、去ってゆくものは戻ってくるのか来ないのかわからないけれど、永遠に電車で揺られながら待つ…みたいな花束を網棚に置いておく人側の視点で鑑賞しました。
句の上では「下降します」とあるけれど、地上より半歩空を生きているような美しい人の句だなと思いました。
寂しさを生けよう飲みさしのシードル瓶へ
"寂しさを生ける" という表現にとても引き込まれました。「怒る」や「泣く」はストレートでわかりやすく、内側から感情を発散している印象があります。一方でこの句は瓶に生けるという行為に、大切にしておきたい、忘れたくない、普通の寂しさの処理法とは真逆の感情が存在しています。
飲みさしのシードル瓶というモチーフも絶妙…
これがビールの缶とかロックグラスとかだったら、寂しさを俳句の表現上でも飲み込んでしまいそうですが、シードルならささやかにそばに居てくれそうです。
感情のほころびを自由律俳句にするのって、上手な言葉を見つけることが大変だし、思った通りに表現できないことがわたしは多いのですが、にっきちゃんは様々な固有名詞を使って繊細に作っていて本当にすごいです。これからもそんな句が見られるのが楽しみだし幸せです…！
それではすずめ園の自由律です🥗
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・八百屋の手の中たわわな桃の実
・しなびた茶葉が朝日を浴びている
・ランナーに追い抜かれながら遅刻
ーーーーーーーーーーー
・裁縫セットは子供のまま
・祖母の達筆と母の丸文字が並ぶ
・朦朧と氷の文字がはためく
ーーーーーーーーーーー
・喉の奥甘やかすためのショートショートケーキ
・窓枠を外れて見えなくなった風船たち
先週の土曜日、洋服を買いに下北沢と高円寺に行ったけれどあまり好みの服が見つからなくて、吉祥寺をふらふらと歩いていた。このまま帰るのは休日を持て余している気がして、ケーキでも買って帰ろうと思い立った。
HARBSで大きなケーキを2つ買った。
夏いちごのショートケーキと白桃のレアチーズケーキ。2つ買ったのは、誰かと分け合って食べるからではない。自分が土曜日に食べる用と、日曜日に食べる用だ。
何も成し遂げていないどころか、服すら買えなかったくせにケーキ三昧。
ーーーーーーーーーーー
・サイダーの泉が湧いてたちまち沈む
・くちびるにハッピーパウダー蝉だらけの町
ーーーーーーーーーーー
・ふーりん口笛混じりの風鈴
・プールサイドのくちびる幽霊色
ーーーーーーーーーーー
・盆の再放送ずっとエンドレスな夏
若い頃ほど時間を長く感じるというけれど、年々、夏という季節の儚さを忘れていっている。
小学生の頃の夏休みなんて永遠に思えるくらい長かった。毎日外に遊びに行く子どもじゃなかったから、休みのほとんどは家でお菓子を食べたり、絵を描いたり、アニメを観て過ごしていた。
特に好きだったのが、涼しいリビングのテレビの前に寝転んでタオルケットに包まりながらひたすらアニメを観るという過ごし方。手元にはテレビのリモコンとお菓子。観るのはキッズステーションやアニマックスといった、子供向けのケーブルテレビ。まるでリアルちびまる子ちゃんだ。これが夏休みの学校のプールの後だとさらに良くて、家で最高の怠惰を味わうのに、プールで得られるほどよい怠さは最高のスパイスであった。
学校の授業だと、泳ぎを練習したり、コースをまっすぐ泳ぐばかりだったけれど、夏休みのプールは自由時間が長くてすごく楽しかった記憶がある。わたしは、みんなで壁沿いを歩いて流れるプールを作ることと、プールの底に落ちた石を拾う宝探しが大好きだった。宝探しなんて、本当にただ潜って石を拾うだけだったのに、先生が「今日は宝探しをやります」と言った瞬間ものすごくわくわくしたことを今でも覚えている。
あの頃から15年ほど経ったが、わたしは今も涼しい部屋で布団に包まりながら、だらだらとテレビを観ている。
夏休みは永遠ではないことを知った。おまけに、誕生日はただの平日で、正月に働く人もいるし、みんなが雪の日にわくわくするわけでもないことも知ってしまった。
テーブルの上にはテレビのリモコンがあり、先ほど食べたファミリーマートの焼きプリンのカップとスプーンが放置されている。
小学生の頃からほとんど変わらない過ごし方をしながら、まだ夏が永遠だった頃のカケラを拾い集めてたまに言葉にしている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実はここ数ヶ月くらい、自由律俳句やエッセイがうまく書けなくて悩んでいました。
書けない日、ちゃんと向き合えない時の自分にはガッカリしてしまうけれど、そんな中でもお気に入りの句ができたり、文章を書き上げられるたびに、ひだりききクラブという場所があって本当に良かったなあと思います。
別に罪を負っているわけじゃないけれど、ひだりききクラブがあるおかげで文章と繋がりを持つための許しを得ているというか、存在が自分の創作活動の希望になっています。
迷った時には原点であるせきしろさんと又吉さんの句集を読むことがとっても効いたので、これからも自由律俳句と出会えた時の気持ちを思い出しつつ、自分の自由律俳句を作っていきたいです。
改めて、3年目もよろしくお願いいたします🌟
すずめ園より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
📻ラジオ出演のお知らせ📻
8月14日(日)、立川志の輔師匠のラジオ番組にひだりききクラブが出演いたします！㊗️
言葉のプロである志の輔さんの番組ということで緊張していましたが、ひだりききクラブの活動や俳句にお優しい言葉をくださり、安心してたくさんお話しできました。(たぶん…！)
わたしもオンエア聴くのドキドキです…
8月14日 7:00〜7:55
『志の輔ラジオ落語DEデート』
朝のラジオです！
師匠とひだりききクラブの3人のデート、途中で流れる落語もごゆっくりお楽しみください☕︎
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回は8月17日 出雲にっきちゃんの番です🍰
『ひだりききクラブ』プロフィール
出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。
出雲にっき
note ( https://note.com/anone_diary )
Twitter ( https://twitter.com/nikkichan_anone )
すずめ園
note ( https://note.com/natsuno_soucho )
Twitter ( https://twitter.com/natsuno_soucho )
はてなブログ ( https://natsuno-soucho.hatenablog.com/ )