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雨降った時しか会えない川

拝啓 出雲にっきさま

 にっきちゃんこんにちは🌹
また梅雨みたいな天気になってしまいましたね。
もともと旅に出る時以外はインドアなので、雨を理由におうちで昼寝ばかりしています。

数週間前までみたいな暑さはないけれど、わたしは見事に夏バテて超少食になってます… ギリギリ一人前のごはんは食べられるので、がんばって胃の大きさを秋まで保ちたいところです🍛

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突然のカレーです。下北沢で開催中のミニカレーフェス内の黒川食堂で食べました。カレーは夏バテ少食人間の味方…


さて前回の交換日記は、さくらんぼ、蝉、サマーグリーンのシャツ、塩飴、梅シラップなど、夏のモチーフが多彩な回でした。どれもまぶしくてわくわくする単語!昨日せきしろさんも言っていたけれど、名詞って良いですよね。その名詞にそれぞれが抱えている思い出があったりするし、そこからパッと色づく印象があります。

・夏至さくらんぼツインテールの影
・恋ケ窪にてピンクの薔薇抱へて

「夏至さくらんぼツインテールの影」はさくらんぼを買った日の帰り道の様子を思い浮かべました。単語の連なりで構成されているのでリズムが良く、まるでスキップのような軽やかさを感じます。さくらんぼを抱えて帰れたら、ツインテールの影も跳ねてしまうほど浮かれちゃうそうです 。

そして恋ヶ窪の句。可愛かったり、面白い駅名を発見すると、何かありそうだとわくわくしますよね。

実はわたしは恋ヶ窪に何回か降り立ったことがあります…!
「ボーノ・イタリア」という、パスタやピザやプチデザート、アイスなどが食べ放題の店があって、高校生の頃は友だちと何度も通いました。東京の多摩地区に何店舗かあって、他の店舗が国道沿いにあるのに対して、恋ヶ窪店は駅から歩いて行きやすい店舗だったので、数ヶ月に一度のペースで恋ヶ窪まで行っていました。なので、恋ヶ窪はボーノ・イタリアでお腹いっぱいになった記憶がほとんどで、あとはシダックスとJAがあったくらいしか印象ないです。全然夢がなくってすみません……。
でも駅前にはハート型のモニュメントみたいなものがあります!(たしか)
そしてピザとパスタはおいしいです!🍝

・しあわせ家でおにぎり食べる
・ラーメンスープ湯気は夏の香
・真夏日横たふおれは煮魚

家庭で食べるお昼ごはんってなんか良いですよね。外食だと、ちゃんと定食とかを食べたりもするけれど、家だと残り物や簡単なメニューになりがちで、そういうのがむしろ幸せに感じたりする。つぎはぎみたいな愛らしさがあります。

特に好きなのが2句目の「真夏日横たふおれは煮魚」です。日焼けの色と煮魚の色を重ね合わせた発想が面白いなと思いました。さらに昼寝の幸福と煮魚の味のやさしさも重なり、じんわり広がるような味わい深さがあります。きっと、煮魚みたいなおれも、それを見る人のまなざしも満腹のようなあたたかさで満たされているでしょう。

・ぽろり、彗星になって、しまった、蝉、

夏が終わると蝉も、蝉の亡骸もあとかたも無く消えてしまうのは、もしかしたら彗星になってしまったからかもしれないですね。にっきちゃんは前回の交換日記の最後に、「七夕の願い事を覚えていないのは星になっているからかも」と書いていましたが、その発想と句の蝉もなんだか似ているなあと思いました。蝉はお願い事じゃないけれど、たぶん、たくさんの人に想われたり嫌われたり、芸術にされたりしながらも、短い時間の中でシュッと消えてしまうから。
いつもは怖かったり悲しかったりする蝉だけど、この句の中の蝉は美しいですね。句読点によって、生まれてから死ぬまでの時を刻む秒針のような効果も感じられました。


それではすずめ園の自由律俳句です🏊‍♀️🏊‍♀️

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・うたたねの肌が野球中継の音を吸う

・カブトムシのにおいの林道抜けたら松屋


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・雨降った時しか会えない川

・落ちない汗が鎖骨で光る

・畳の部屋にバニラアイスの粗相


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・叶わなかったのは七夕のせい


2022年7月7日

去年の9月、最寄駅から1つ隣の駅へと続く道の途中、とある張り紙を見つけた。

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「お客様へ 夏の間休みます 店主」


細い字で書かれた短冊形の貼り紙は、夏の間という、曖昧だけど長い休みを知らせていた。看板もないし、ガラス扉の向こうにはカーテンがかけられていたので正体はわからなかったけれど、この建物はどうやら何かの店のようだ。
あとでGoogleマップ調べてたら、洋菓子店だということがわかった。それからわたしはその店の前を通るたび、秋が来るのを待ち遠しく思うようになっていた。

やがてわたしたちは衣替えをして、もう夏とは言えない季節になったけれど、店が開くことはなかった。見たけた日からずっとカーテンにつつまれたままで変化がない。もしかしたらこのまま洋菓子店が開くことはないのかもしれない。そう思ってしまうほど、店は静かでじっとしていた。

ところが今年の春頃になって、初めて洋菓子店が営業しているのを見かけた。

小さな店の内外には数人のお客さんがいて、店の一番奥にはパティシエ風のおじいさんが立っていた。ショーケースの中には、ショートケーキやモンブラン、パウンドケーキなど、定番だけど見ているだけでわくわくしてしまうようなケーキたちが並ぶ。丁寧な手書きの商品札がなんともクラシカルだった。長い夏が終わったのを目にした瞬間だった。
この日は、ついに洋菓子屋が営業しているのを見られたことが嬉しくて、「今度ケーキを買いに行こう」と決心だけしてその場を後にした。

それから何度か営業中の洋菓子店の前を通ったけれど、ケーキの気分じゃなかったり、出かける前だったりして、なかなか洋菓子店に行かずにいた。

そして今年の七夕の日。しばらくあの道を通っていなくて洋菓子店のことを忘れていたが、もう7月になってしまった。7月は夏のうちに入るだろうか。人によっては夏かもしれないが、今だけは夏じゃないことにしてほしい。

数週間前までは営業していたのを見たし、まだ間に合うかもしれない。また夏の間に休まれてしまう前に早く行かないと、と思い、わたしは仕事終わりに急いでお店に向かった。



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「夏の間休みます 店主」


もうとっくに夏は始まっていたのだ。


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・たぶん同じ蚊にさされた

・信金のうちわで向かい風を作る


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・いつか縁側でする永いキスです

自分がエロ自由律俳句を詠んだら、をテーマに句を考えることがたまにあります。
でもわたしは生々しい句とか書けないし、考えるのも照れてしまうから、ほんわかハートフルな句を作りました。

キスなんて言葉、たぶん、自発的に文字に起こしてみたのは初めてです。恥ずかしいです…………。とても照れます。はずかしい。
照れゆえにごまかしてつけてみた「です」です。


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(「エロ自由律俳句」とは、かが屋の加賀さんと作家の白武さんによるクイック・ジャパン ウェブの連載です。わたしとにっきちゃんが仲良くなるきっかけとなったとても面白い連載です)

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・平面的な魚が泳ぐ図画工作

・味のしないイチゴミルクで濯ぐ絵筆

・お好みで入れた小ネギがなじめずに浮く


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前回の交換日記では「朝顔の苗をご自由にどうぞ」という写真を載せましたが、七夕の日には「七夕の笹 御自由にお持ちください」と、フリー笹配布をしている民家を見つけました。
「ほ、欲しい……!」と反射的に思ったけれど、置き場所がないし、七夕が終わった後にどうすればいいかわからないのでもらうのはやめました。
フリー笹、もし来年もあったら折り紙買ってきて一人七夕しよかな… 今年はお願い事をし損ねました。

実は昨日から6日間の夏休みです。わーい🍧
たまにお出かけしつつ、ウォーキングデッドたくさん観たいと思います!たのしみ!

それではまたね にっきちゃん〜❕

すずめ園より

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🥛『せきしろ句会 vol.3』配信アーカイブ🥛

7月13日に開催された『せきしろ句会 vol.3』の配信アーカイブが7月27日23:59までご覧いただけます。せきしろさん、ひだりききクラブ、歌人の木下龍也さんの4人で「色」がテーマの自由律俳句を鑑賞しました。

今回もほのぼの有り、真面目なトーク有りで楽しかったです。木下さんの歌人ならではの鑑賞する視点、とても勉強になりました。さらっと作ってしまったり、軽い気持ちで鑑賞してしまうこともあるのですが、リズムや助詞まで紐解いてみるとどんどん句の味わいが増すものですね。自由律俳句を通して知らない「色」をたくさん鑑賞させていただきました!

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次の更新は7月20日 出雲にっきちゃんの番です🍧

『ひだりききクラブ』プロフィール

出雲にっき、すずめ園による自由律俳句ユニット。毎週水曜日にnoteにて自由律俳句の交換日記、「 #ひだりききクラブの自由律俳句交換日記 」を更新している。

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