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ものぐさトミー【読み聞かせ・読み語り】

この本の表紙を見て、何を感じるだろうか。わたしは「絵が古い」「特に惹かれるものはない」と思った。小さい本だし、並べていても決して目立つことはないだろう。

でも、この本はわたしが読み語りや読み聞かせをするなかで推したい作品のひとつである!

あらすじとしては、電気仕掛けの豪邸に住んでいるトミーのお話。朝起きるところからシャワー、着替え、朝食に至るまでのすべての身支度が自動装置で行われる。

「めんどくさがり」という意味の「ものぐさ」とは、そういうことかと膝を打つような始まりである。

トミーは電気仕掛けの装置がないと何もできないが、ある日停電になって自動装置が止まってしまう……一体どうなるのか!? よくできた逆回転で、非常に盛り上がる絵本である。

このタイトルも「つかみ」のトークにもっていきやすいからまた、よい。
「ものぐさ」なんて言葉は、今の子どもはあまり知らないことが多い。昔話やとんち、落語が好きな子でもなければ知らないだろう。

しかし、「ものぐさってどういう意味か知ってる?」という問いかけから入ると、絵の表紙にあるトミーのいで立ちと、言葉から感じられる雰囲気をつなぎ合わせて連想し、正解する子も出てくる。

「そうそう、ものぐさってめんどくさいって意味なんだよ。みんなはめんどくさがり? ちなみにわたしは、超めんどくさがりです」なんていうと、笑ってくれて、場が和んでくる。

内容としては、やはり電気仕掛けで身支度のすべてをやってくれる夢の装置があるわけで、そこに「いいなぁ~」と心惹かれるものがあり、わくわくする、子どもの理想みたいなものが描かれている。

しかし、それが一転、ちょっとし停電によって大惨事へと発展するのだが、その様子は今までの内容を読んでいれば、ちょうどよく想像ができて「やばいやばい!」「まさか……!」と興奮するのであるが、その期待や興奮を裏切らない。

笑えるおもしろい絵本であるだけでなく「身の回りのことを自分でするって、当たり前だけどだいじなんだよね」みたいな教訓的なメッセージも含まれているし、最後に「ぼくはこれから新しい生活を切り開かないとそれこそもう……おしまいだ」みたいな、言葉遊びで終わっているところもまた最高なセンスだ。

ただ……ひとつだけ難点がある。ひとつだけなんだが重大な難点である。
絵本がとても小さくて、絵のタッチも非常に薄い。

小学校の教室などで、大勢を相手にして読むにはちょっと不向きなのですごく残念。もっと、本が大きくて、絵も遠くからでも見やすければ、わたしは低学年、高学年に限らず、たくさんの子どもたちにこの笑いと教訓を届けたいと思っているのだけれど。

文も絵も同じ、海外の作家さんだからどうにもならないよなぁ……。もちろんこの絵だって、すごく細かく書かれていていいんだけれど。少人数や家庭での読み語りには最適!

そんな、いろんな思いのつまった絵本。


岩波書店 ものぐさトミー







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