内向型で本当によかった
ガチャガチャしている事が苦手である。
街の雑踏を歩くのも、パーティのような場所に行くのも、苦手だ。
だから自然と、できる限り人混みを避けて行動するようになっていた。
それよりもひとりで考え事をしていたり、本を読んでいたり、ドライブをしている方が楽しいと感じるのだ。
文章だけ見れば、根暗だなと思われる方も多いだろう。
実際、そうかもしれないが、僕自身は話す事も好きだし、過去には学内という小規模ではあるが、ラジオのパーソナリティを務めていた事もあった。
だから、文章通じて知り合いになった人は、僕と話した時に驚かれる事が非常に多い。
世の中には、内向型と外向型という言葉があるが、僕の中には内向型な部分と外向型な部分が共存しているようだ。
そして、そのどちらもを気に入っているのだが、最近では内向型の部分の方が、自分らしいなとか、これが強みだななどと思えるのだ。
今までも内向型を意識した事は何度もあったが、それを自分自身が認めてあげられる事はほとんど無かったように思う。
大学の時に読書を始めたが、それは一人暮らしを始めて、家ではひとりになり、新しい趣味が欲しかったためである。
しかし、大抵の大学生はサークルに入って友達を作って、となりそうなものだが、僕には当てはまらなかった。
そもそもサークルに入る事が、僕には全く魅力的に映らなかった。
それまでも部活などで、友人と過ごす事はあったけれど、大学のサークルには入りたいと思わなかった。
勉強する事は好きだったので、しっかり勉強もしていたし、そこで始めた趣味も読書とあって、かなり内向的な部分を強化した時期でもあった。
その時にはなんとも思わなかったが、大学卒業後に就職して、同期にその話をしたら、思わぬことを言われ、今でもその記憶が鮮明に残っている。
「大学は暗黒時代だったんだね」
衝撃だった。
僕は、少しもそんな風に思っていなかったからだ。
むしろ、読書という新しい趣味に出会えたし、サークルには入っていなくとも僕には十分なだけの友人もできた事で、大学時代は最高の日々だったと思っている。
しかし、当時の同期から言わせれば暗黒時代なのだそうだ。
疑問に思って、別の同期や先輩などに聞いてみたが、僕の大学時代を暗黒時代という人の方が多かったのだ。
だからと言って、落ち込むなんて事は無かったが、ただ衝撃的だったのだ。
この衝撃によって、僕は今まで意識していなかった自分の内向的な部分を意識するようになったのだ。
しかし、衝撃をきっかけに内向的な自分を意識するようになったためか、どちらかと言えば、自虐的にネタとして内向的な自分を使っていたように思える。
「根暗だからさぁ」とか、「友達少なくて」などを会話に折り込んで笑いにしてしまうのだ。
その場では、笑いになるから良いけれど、自分を傷つける行動だとわかっていなかったのだ。
自分の内向的な部分を愛せていなかったのだ。
それでも、ひとりで考え事をする時間はもっと楽しくなったし、お金に余裕が出来たから、学生の時よりも読書が捗って、今まで以上に好きになって行った。
行動と心にギャップが出来てしまったのだ。
この時ほど、内向的である事が、さもいけない事のように思えてしまったのだ。
僕には外向的な部分もあったから、その後も別になんとも無かったが、もしもっと内向的な部分で自分が構成されていたら、その時の生活はストレスでしか無かっただろう。
ただ、今になって思うと、内向的な部分を愛する事が出来たから、今のように少し孤独でも生活する事が出来ているのかなと思っている。
僕は会社に務めているわけじゃないし、近くに友達が住んでいるわけでもない。
幸い、パートナーは一緒に住んでいてくれるので、内向的な自分にはこの生活がちょうど良かったのかもしれない。
今日もひとりで書斎に籠り、パソコンに向かっているが、今はこの時間が楽しいと思える。
ひとりで考え事する時間も、読書している時間も、執筆のために情報収集している時間でさえ、楽しいのである。
「暗黒時代だ」と言い放った同期には、この感覚は無いのだろうと思う。
僕のように、ひとりの方が楽しめる人は、決して少なく無いはずだ。
世の中で目立つのは、声が大きくて、周りに人が集まるような人だろうけど、それだけが素晴らしく目指すべき姿では無いのだ。
内向型の人には、内向型の素晴らしさがあるのだ。
だから、今日も雨の降る窓際でゆっくりと読書をしよう。
この素晴らしさが、伝わればいいのだが。
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