連作短歌:信楽狸に呪われた
ある種の呪いみたいなものだったと思う。信楽狸に関する短歌を突然5首つくってしまった。こういう、自分でも理解しがたい、変にスイッチの入る時が、うたを作っていて最も楽しい瞬間のひとつだと思っています。
呑んできた、のはまぁいいとして信楽の狸どうして玄関にいる
信楽の狸が好きと言えぬまま婚姻届に判子を捺した
信楽の狸のように人がみな人を見つめるやさしい世界
庭先の信楽狸の両目より光線を出す構想を練る
人間と狸の数を合わせれば大都市となる信楽の里
連作、ではなくこれは信楽狸のテーマ詠ですね。もとは「うたの日」のお題「狸」に投稿した際、理由はわかりませんが何故か次々浮かんできたものです。投稿したのは冒頭の「呑んできた、のはまぁいいといして信楽の狸どうして玄関にいる」の1首なのですが、これよく読むと、ていうかよく読まなくても57577じゃなくって「59577」になってるんですよ。…実は詠んでいるときには全く気付かず、投稿してから「あれ?」ってなった。何をやっていたんだ、自分…。
でもなんとなく語感がいいのでそのままです。ちょっと説明し難いんですが、7ではなく9でイレギュラーなひと呼吸をつくることにより、ため息感というかヤレヤレ感みたいなものが醸し出されているような気もする。
この歌をためしに57577に整えるとこんな感じになるでしょうか。
呑んできた、のはまあいいが信楽の狸どうして玄関にいる
呑んできた、のはいいとして信楽の狸どうして玄関にいる
うーん、やっぱり投稿した59577の方の、なんとも言えないどうしようもなさが好きですね。こういうはみ出しを(たまに)許容してくれるのも短歌の面白いところだな、と思いました。これも狸の呪いですかね、いい方の呪いですね!
あ、ちなみにこの5首の中で一番気に入っているのは「信楽の狸が好きと言えぬまま婚姻届に判子を捺した」です。そっちかよ!
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