オープンダイアローグとの出会い①
森川すいめいさんのオープンダイアローグ(OD)の連続講座に行ってきた。医療者向けではなく一般向け。
ある日、たまたまtwitterでこの講座を見かけ、なぜか参加ボタンを押していた。すいめいさんの名前は記憶にあった。昨年末、ボランティアで池袋「TENOHASHI」で炊き出しに参加した際、ホームレスの方々の健康相談をテントの下でしているのを見かけた。ご多忙な方にもかかわらずすいめいさんの周りだけ空気がふんわりとしていて印象に残っていた。でもそれだけといえばそれだけで特に強く惹かれたとかすいめいさんの本を読んでみたとかはなかった。当日は仕事で講座に遅れそうになり1時間かけて新宿まで行く気にならずキャンセルしようかとも思った。
30分遅れて到着した会場には80人近くの人がいた。ちょうどスライドを見ての説明で途中からなのでよく分からず疲れた...という言葉が頭の中を占めていた。
でもぼんやりと聞いていてすいめいさんの話し方は気に入った。大勢の聴衆の前なのに一人一人に話しかけている感じがしてなんだか遅刻してもよくわかっていなくても置いてきぼりをくらってないぞという安心感があった。
ODは精神の病を持つ人々向けにフィンランドの小さな村で1980年代に国策としてはじまった対話を通しての治療で
⚪︎本人のいないところで本人の話をしない。
⚪︎専門家は2人以上
⚪︎専門家はクライアントと上下関係はない
などのルールがあり正しいスタイルは専門家にという意見を手放し本人達にとって開かれた場を作ろうという試みからはじまった、というところまではわかった。
説明の後は早速実践してみましょうという事になり説明後4人1組のグループになってクライアント役(話す人)をそれぞれが体験できるという。それぞれが
1,ここへきたいきさつ
2,ODに対する期待
を話すのだが今回は時間もかなり限られているので1,ここへきたいきさつを一巡した後2,ODに対する期待 をグループごとに紙に書いてそれをすいめいさんともうひとりの先生が休憩中に読んでリフレクティングしてくれた。今回はおふたりがわたし達全員のファシリテーター※役となった。
リフレクティングというのは話を聴いた上で感じたその人の「主観的な感想」でファシリテーター達が感じたことを話す。その感想が主観的、つまり正解ではないということをよくよくわかっているのがポイントでクライアントの話した内容を理解できなくてもなるべく「try to understand」理解しようとする姿勢が大切らしい。あくまでもクライアント本人の中の会話を促進するプロセスをお手伝いするという感覚。
わたしは2.ODに対する期待に「本当に話を聞く」ってどういうことか知りたい。と書いた。たまたますいめいさんがその部分を読んでくれてこう言った。
「そうですね〜それを知る為の1カ月なのかもしれないです」
最後に次回への宿題としてお話があった。
「読まれなかった質問もありましたが、どうぞそのモヤモヤも大切にして下さい。人は本当に話を聴いてもらったり、大切にしてもらったり、体験されたことしか人にしてあげる事ができません。だからみなさんこれから自分を大切にする、大切にされる1ヶ月にして下さい。話も聴いてもらって下さいね。自分を本当に大切にするってどういうことか、考えてみて下さいね・・・。これが僕からの次回への宿題です」と、とつとつと言われた時、自分の中のなにかが溶けた気がした。奥に小さく古く固まって凍っていた何かが。小さ過ぎてなかったことにしていた何かが。
それはなんとも言えず不思議な感覚だった。
☆ オープンダイアローグとは何か 斎藤環 著+訳 オープンダイアローグとは何か https://www.amazon.co.jp/dp/4260024035/ref=cm_sw_r_cp_api_i_pK4TDbNHJ3ZP6
『オープンダイアローグの理論は、ひとりのカリスマ的な理論家のナルシシズムに奉仕するためのものではない。つまり、関わってきた専門家たちが一緒に発展させてきたもので、第一人者のセイックラ教授もあくまで自分はスポークスマンのひとりだという謙虚な立場を貫いていて、共著は出しても単著を出すことに対しては禁欲的だ。』
『必要最低限の専門性を維持しつつ、治療システムを構築する』
『ミーティングにはファシリテーターはいますが、会話を先導したり結論を導いたりするような「議長」や「司会者」はいません。ちなみに※ファシリテーターとは、中立な立場を保ちながら折りに触れて話し合いに介入し、議論がスムーズに進行するよう調整しながら、相互理解に向けて、議論を広げたり深めたりするような役割を負った人のことを指します』
精神科医の斎藤環さんが第一人者のヤーコ・セイクッラ教授の論文を説明、訳した本です。オープンダイアローグの入門書として概略や哲学がとてもわかりやすく学べます。
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