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リムスキー=コルサコフが語る、《熊蜂の飛行》

Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
この番組では、毎回異なる音楽家がパーソナリティーを務め、
自身のお気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを語っていきます。
今日の担当は、作曲家のリムスキー=コルサコフさんです。

(お話は史実に基づき構成しています)


こんにちは、リムスキー=コルサコフです。
作曲と指揮活動のほかに、
ペテルブルク音楽院で作曲を教えています。

今日は、私が作曲した《熊蜂の飛行》を紹介したいと思います。
この曲の名前を初めて聞くという方も
音楽は、どこかで耳にしているのではないでしょうか。
暖かくなって、虫が飛んでくると思い出す、なんて人もいるかもしれない。

リムスキー=コルサコフ(1844−1908)

今は、音楽院で教授をしていますが、
私が音楽家になったのは、かなり遅く20歳を過ぎてからなんです。
それまでは海軍学校に通い、海軍兵として活動していました。
自宅では、音楽も幼少期から学んではいましたが、
とりわけ文学、ロシア文学には凄く魅せられていました。
そんなこともあって、
ロシアを代表する作家アレクサンドル・プーシキン
生誕100年を迎えるにあたり、
何か自分でも作品を残したいと考えたんです。

アレクサンドル・プーシキン(1799−1837)


僕も含めたロシアの若手作曲家仲間を
「ロシア5人組(力強い集団)」と命名して、
いつも熱心に応援してくれている
芸術評論家のウラディーミル・スターソフに相談したら
それならプーシキンの作品の中でも「サルタン王の物語」が最適だというので、
台本作家のベリスキーに協力してもらって、
オペラ《サルタン皇帝》を作曲することにしました。

イワン・ヤコブレヴィッチ・ビリビン作 アレクサンドル・プーシキンの『サルタン皇帝の物語』の挿絵


《熊蜂の飛行》は、オペラ《サルタン皇帝》のために書いた音楽です。
オペラの中では、サルタン王子が白鳥にお願いをして熊蜂に変身する場面と、熊蜂に変身した王子が邪悪な二人の姉妹を攻撃する場面の2つの場面で演奏されます。

「蜂の飛翔」(1905)イワン・ヤコブレヴィッチ・ビリビン作
アレクサンドル・プーシキンの『サルタン皇帝の物語』の挿絵


オペラ《サルタン皇帝》
は、
ワーグナーが使っていた
ライトモティーフという作曲技法を使って作曲しています。
(注:ライトモティーフとは、オペラや標題音楽で繰り返し使われる、
特定の人物や感情、場面などを表す旋律や動機のこと。)

ライトモティーフについては、
以前チャイコフスキーR.シュトラウスもお話ししていたので、
興味のある方は、よければそちらも参照ください。


主役のサルタン王子には、
いくつかのライトモティーフを使っていますが、
《熊蜂の飛行》の中では、
特に「英雄サルタン王子」と名付けたライトモティーフを駆使しました。
サルタン王子が熊蜂になって英雄的な活躍をしますからね。

「英雄サルタン王子」のモティーフ


《熊蜂の飛行》の中では、
このモティーフを下のようにAとB、2つの部分に分けて
特にAのところは、細かい16分音符に展開して
蜂が飛び回る様子を描いてみました。


熊蜂らしさ、出ていますよね。

それでは、《熊蜂の飛行》を聴いてください。
今日は、この曲の秀逸な演奏とピアノ版編曲で知られる
ジョルジュ・シフラによる編曲版でお聴きください。
演奏は、ユジャ・ワンです。


Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
いかがでしたか。
番組は、ほぼ日更新。名曲の、目から鱗のエピソードが語られていきます。
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夏目ムル
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