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パスタが語る、ベッリーニのオペラ《ノルマ》
Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
この番組では、毎回異なる音楽家がパーソナリティーを務め、
自身のお気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを語っていきます。
今日の担当は、オペラ歌手のジュディッタ・パスタさんです。
(お話は史実に基づき構成しています)
こんにちは、イタリア出身のオペラ歌手、ジュディッタ・パスタです。
今はオペラのステージからは引退して、
時々コンサートで歌ったり、声楽を指導したりしています。
今日は、作曲家のベッリーニ先生が、
私のために書いてくれたオペラ《ノルマ》をご紹介したいと思います。
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私の声は、いろいろなキャクターを備えていると思いますが、
特徴的なことの一つは、声域が広いことかしら。
ソプラノのコロラトゥーラから、
コントラアルトの音域まで無理なく歌うことができます。
スフォガート(限界のない音域を持つ)というソプラノになるかしら。
コロラトゥーラとコントラアルトってあまりに対象的だから
普通は信じられないと思いますが、
例えば、ベッリーニ先生が私の声のために書いてくださった作品
《夢遊病の女》と《ノルマ》を聴いてくだされば、
少しご理解いただけるのではと思います。
《夢遊病の女》と《ノルマ》の前には、ドニゼッティ先生が私のために
《アンナ・ボレーナ》という作品を書いてくださっています。
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マリア・カラスと並び語られることもある伝説の歌手パスタ。
多くの作曲家が彼女の声に充てた役を書いた。
ベッリーニ先生の作品を歌うことが決まったのは、1829年のこと。
ミラノの劇場からのオファーだったのですが、
当初は、新作を今話題の若手作曲家ベッリーニ先生が書くっていうことだけ
を聞いていました。
それで翌年の夏、ベッリーニ先生の休暇先で、
台本作家のロマーニ先生と私と3人で綿密な打ち合わせをして、
かなり速筆で仕上げられたのがオペラ《夢遊病の女》です。
1831年にミラノのカルカーノ劇場で初演され大成功を収めました。
私のコロラトゥーラを存分に活かしてくださった
美しく劇的な作品です。
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このオペラ《夢遊病の女》が大成功だったのを受けて、
なんと、あのスカラ座が、私とベッリーニ先生、作家のロマーニ先生に
新作をオファーしてきたのです。
それも次のシーズンの開幕を飾る作品として書いてくださいって。
私にとっては憧れのスカラ座へのデビューになります。
それで、1831年の夏からまたしても速筆で
オペラ《ノルマ》が仕上げられたのです。
今回は、なんと3ヶ月ですよ!
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1831年12月26日の初演に向けて、12月5日からリハーサルが始まりました。
実はリハーサルで初めてアリア《Casta diva カスタ・ディーヴァ》を歌った時、
私は「自分の声では無理だ。このアリアは到底歌えない」と感じたのです。
そう《カスタ・ディーヴァ》は
今では誰もがご存知のノルマの代名詞的なアリアです。
するとベッリーニ先生は、どうしても私にこのアリアを歌って欲しいって。
「あなたなら大丈夫。1週間だけ、どうか歌い続けてみてください」
と懇願されたのです。
それから先生の仰るように
私は《カスタ・ディーヴァ》を歌い続けました。
しばらくすると、フルートの前奏に導かれるようにノルマの祈りのアリアが、
私の声と重なっていったのです。
その後の、このオペラの成功は皆さんもよくご存知の通りでしょう。
それでは、オペラ《ノルマ》の第1幕から
ノルマのアリア《Casta diva カスタ・ディーヴァ》をお聴きください。
演奏は、マリア・カラスです。
Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
いかがでしたか。
番組は、ほぼ日更新。名曲の、目から鱗のエピソードが語られていきます。
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