見出し画像

シューマンが語る、《3つのロマンス》作品94

Note上で展開する、架空のラジオ番組《クラシック・エトセトラ》。
この番組では、毎回異なる音楽家がパーソナリティーを務め、
自身のお気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを語っていきます。
今日の担当は、作曲家のロベルト・シューマンさんです。
(お話は、史実に基づいて構成しています。)


こんにちは、ドイツ出身のロベルト・シューマンです。
今はドレスデンに住んで、
曲を書いたり指揮をしたりしています。

1850年のロベルト・シューマン(1810−56)の肖像画


今日は、今年のクリスマスに
私が愛する妻クララに贈った作品を紹介したいと思っています。
クララには、これまでにもたくさんの音楽を贈っています。
それで、今回は今までとは少し違うテイストの作品をと思って
独奏管楽器とピアノのための以下の3作品を贈ることにしたんです。

・ホルンとピアノのための《アダージョとアレグロ》(Op.70)
・クラリネットとピアノのための《幻想小曲集》(Op.73)
オーボエとピアノのための《3つのロマンス》(Op.94)

独奏楽器は、ホルン、クラリネットとオーボエで、
いずれもピアノとのデュオという形にしました。
私的には、どの作品もピアノ・パートは先ずはクララに演奏して欲しくて、
ホルンとクラリネットの2つの作品は今年、彼女が初演をしてくれました。
オーボエの《3つのロマンス》も、近いうちにクララに初演してもらうつもりです。

もう、何度も聴いているはずなのに、
3曲を改めて花束のように束ねて贈ったら
クララはすごく喜んでくれて・・・。
それが、私にとっては何よりもの幸せでした。

1847年のシューマンとクララ

今日は、その中のオーボエとピアノのための作品を紹介しようと思います。
実はオーボエのための作品を書いたのは人生初なんです。
どれも歌謡的で短いので、ロマンスと名付けました。

今年を振り返ると
この作品を含めて、本当にたくさんの曲を書きました。
いつも創作エネルギーに溢れていて、
美しいメロディとアイディアが、溢れんばかりに湧いてきました。
一方で・・・就職先の方は、なかなか見つからなくて。
そんな中、この間デュッセルドルフの楽友協会から、
音楽監督のオファーがあって、
迷ったのですがクララとも相談して引き受けることにしました。

年が明けたら、家族でデュッセルドルフへ引越しをする予定です。
今年は、ここドレスデンで5月に革命があって疎開したり、
本当に落ち着かない年だったのですが、
ようやく定職が決まり、私もクララも
今回は少しホッとした気持ちでクリスマスを迎えることができています。


今日お聴きいただく《3つのロマンス》第2曲冒頭には、

と書きました。
これは日本語だと
「シンプルに(Einfach)、心から(innig)」と訳されていると思います。

この「innig
実は、僕が作品で良く使っているお気に入りの言葉です。
日本語では、「心から」と訳されますが、
それだけではなく、親密さだったり、深い愛なんかのニュアンスも含んでいて、
日本語でお伝えするのは難しいですが、
凄く好きな言葉です。

それでは、《3つのロマンス》Op.94の第2曲 Einfach,innig 
聴いてください。
演奏は、ハインツ・ホリガーのオーボエ、アルフレート・ブレンデルのピアノです。


いいなと思ったら応援しよう!

夏目ムル
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!