子宮頚がん検診

先月、町から健康診断の案内の封筒が
届いていたのを思い出した。

健康診断ってどんな感じなんだろう

好奇心で保健センターに電話をし、予約をした。
そして、さらに好奇心で、
同封されていた子宮頚がん検診の予約も
一緒にしてみた。

好奇心は猫をも殺す

こんな言い回しがある通り、
当日がとんでもない恐怖体験になることを、
このときのわしはまだ知らなかった。

検診の日、
持ち物欄に書かれた受診料と問診票、
バスタオルを持って病院に向かった。

なんでタオルがいるんかな。
移動で使うって書いてあるけど、
イメージ湧かないな。
なんて思いつつ、

まあ、行けばわかるだろう。

と、だいぶお気楽なわしだった。

受付で先に会計を済ませ
待合室に入ると、テレビから
お昼の情報番組が流れていた。
待合室には女性しかいない。
それもそうか、子宮だもんね。
台湾の観光地が中継されている。
久しぶりにテレビみたな。
たくさんの大人が映っているけど、
みんな小学生の学級会から本質は
変わっていないんだよな。
そんなことを考えていると、

「さとうなつみさん。さとう、なつみさん。」

名前を呼ばれた。

診察室に入ると、目の前はカーテン
横にイス。

予想外だった。

これは、、、、、、、あれだ。
あの、婦人科にあるイスだ。
え、この検診ってそういう検診だったんだ…
うわぁ、そういう感じじゃないと思ってた…

コンマ1秒で流れた思考を遮るように、
カーテンの向こうから声がした。

「荷物はそこに置いて、ズボンは脱いでください」

女性だ。看護師さんかな。

逡巡してる間に、こちらの雰囲気を察してか
医者が声をかけてきた。

「準備ができたら、イスに腰掛けてください」

この間、10秒も経っていない。

わしの疑問は1つ、
用意したバスタオルはどこで使うんだ…
歩くといっても、イスまでほんの数歩だし、
たぶん上からかける感じでもないだろう。
というか、ズボンは脱げって指示はでたけど
下着は脱がなくていいんか。暗黙の了解なのか。

疑問を増やしながら、
君に迷っている暇はないのだよと
いわんばかりの圧をカーテンの向こうから
感じ取り、とりあえずなるようになるだろうと
半分パニックのままイスに座った。

…不安しかない。

たぶん、顔を合わせると気まずくなるから
カーテンで仕切ってあるんだろうけど、
向こうで何が起こっているのか、
いつ触られるのか、
何もわからないのは思っていたよりも不安だ。

せめて看護師さんくらい
こっち側にいてくれないかなあ。
それか、顔だけ出してくれないかな。
それはそれでなんか嫌か。

そう思っている間に、
どんどん検診はすすんでいく。

生々しい話だが、子宮頚がん検診は
性器の中の細胞をとって、それを顕微鏡で
みてガン細胞がないかを確認する検査らしい。
つまり、細胞をとるために中に器具を
差し込むのだ。
それ自体はいいのだけど、
わしがかかった先生は

力を抜いて下さいねー

と言った以降は、

はーい大丈夫ですよー。はーい、はーい

しか言わないもんだから、
差し込むときも内診するときも
急に内臓を触られるので圧迫感がすごかった。

いやいや、内臓触ってる意識持って下さいよ…

なんて思った矢先、

「お腹押しますよー」

あ、そこは声かけするんだ。
逆じゃない?

なんて、変に冷静に頭でツッコむ

「はい、大丈夫ですね、お疲れさまでした。
血が出るかもしれませんが、検診の影響なので
大丈夫です。」

いや、内臓傷ついてるじゃん?
何で大丈夫なの?

そう思いつつも、
あ、はい。とだけ返事をした。

このときわしは子宮頚がん検診がどういう
手順で進むのか知らなかったから
出血の可能性を聞いてさらに不安に
なったけど、要は細胞を採取するから、
その際に粘膜を擦る必要があるため
出血してしまう人もいる
ということらしい。
事前にそう言って欲しいよぉ…。

検診が終わり、イスが下がる。
急に無言になるカーテンの向こう2人。

え、なんか検査結果とか言われ…
る雰囲気じゃないなこれ。
さっさと立ち去れってことか…

いそいそと服を着るも、
そもそも服を着てくださいとか言われていない
気がするからまだ着ちゃダメなんかな
なんて謎思考が湧き上がる。

午前中とは思えない気まずさの中、
カーテンの向こうにお礼を伝えて
診察室を後にした。

結局、バスタオルはなんのためだったんだろう…

診察室を出た瞬間、
緊張と入れ替わりで虚無感におそわれる。
知らなかったけど、人間は内臓をいじくられると
思った以上に吐き気を催す。
経験したことのない、
なんとも言えない気持ち悪さを抱えながら
出口へと向かう。

待合室の女性達が目に入る。

みんな、これを経験してもなお
体のために検査するんだ。
女性ってすごいな。わしにはむりだ。

診察時間は5分程だったが、
その5分で負ったダメージは凄まじかった。
恥ずかしいとかそんなんではなく、
羞恥心よりも恐怖心の方が上回る。

狭い部屋、大きなカーテン、あのイス、
顔の見えない医者、

被験体になった気分だったし、
すごくタチの悪いドッキリに騙された
気分だった。

人間の所業じゃない…
明日から人を信じられる気がしない…

終わってからしばらくは、
本気でそんな気持ちだった。
そもそも誰かに言われて検診を
受けたわけじゃないから、
騙されたも何もないのだけど。笑
それくらいショックだった。

動物病院にかかるペット達は
きっとこんな気分になっているに違いない。
非日常過ぎる空間に覚える恐怖は
生き物の共通認識だ。

多少は健康を気づかってとった行動が
こんなトラウマ級の体験になるなんて
誰が思っただろう。
泣きはしなかったけど、
心がとまったような
現実だと思いたくないような、
そんな気持ちになった。

わしは子宮頚がん検診をなめていた。
いや、婦人科検診全般にいえることなのだろう。
こんなに下調べが重要な検査だとは
思わなかった。
今回、こんなパニックを引き起こしたのは
知識不足が原因だ。
いつも、病院側から説明がもらえるとは
限らないと、身を持って体験した。
あんなこわい体験、二度としたくない…。

これを読んで、
私も子宮頚がん検診を受けたい!
って思う人はいないかもしれない。
けど、この検診は、20歳以上から
2年に1度受診することが推奨されている
大事な検診らしい。
自分の健康を守りたいと思ったあなた、
わしみたいにパニックにならないように
ちゃんと下調べをしてから病院にいこうね。
ほんに、そうした方がいい。
けど、個人差とか
病院差とかお医者さんにもよる
って話を聞いたから、
あまりこわがらなくても大丈夫みたいだよ。
わしは10年くらい行きたくないけど…

_φ(・_・無

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