生後7か月のきみ
前月の長雨は、一気に次の季節を連れてきた。結局、秋用のコートに袖を通すことがなくこのまま冬になりそうだ。
ある日、息子の体に蕁麻疹が出た。生後半年を過ぎ、免疫力が低下してきたせいだろうか。
病院に連れて行くと、蕁麻疹の原因は、はっきりしないことが多いらしい。洗ってしまい込んでいた毛布を使ったせいかも知れない、とのことで、すぐに毛布を洗い直した。最近始めた離乳食のせいではないようでほっとした。
離乳食は概ね順調。少し前から、私たちが食べるものを良く見ていて興味がありそうだったので、わりとすんなり色々なものを受け入れていた。
「熱海にでも行きたいな~」
ある日、夫が珍しくそう言った。
私は旅行ならいつでも歓迎だ。今年は家を買ったし、旅行は我慢かな……と思っていたが、近場の温泉ならいいか! 善は急げと早速、赤ちゃん連れOKの宿を検索。夫婦2人のときは部屋食の旅館! とか思ってたけど、今回は息子優先。食事は離乳食無料のビュッフェ。ゆっくり食べられる時間なんてなさそうだし、どうなることやらわからないけど、とりあえず行ってみよ! ……自分が出掛けたいとき、私は結構ポジティブだ。
旅行は、思いの外楽しめた。
初めての大浴場体験をした息子は、夕飯の時間にぐっすり寝てくれたので、私も夫も地の魚をたらふく食べ、デザートとコーヒーまでゆっくり頂くことができた。--育児をしていると、ゆっくり食事なんてできないことがほとんどだが、たまにこういうご褒美時間があるから嬉しい。次の日の朝食は、こうはいかなかったけれど。
気になっていた蕁麻疹も、旅行中は引いていて、その後、出たり引いたりを繰り返し、季節が安定して冬になった頃には出なくなった。
大人のリフレッシュのために連れてこられた、息子にとって初めての旅行。成り行き上たくさんの「初めて」を経験させられ、その「素の」反応は私たちを喜ばせた。大浴場の広さに固まったり、海の波に怯えたり……。
子どもを産んでから、世界は思い通りにならないことだらけだ。でも、その世界は、息子と一緒だと、今までとは違って見える。
--次はどんな反応をするのだろう? 単純にわくわくする。
子どもと「初めて」を経験し直すこと。それは、親の醍醐味なのかも知れない。